Interview
インタビュー:タイのラップクイーン・MILLI、LiFTED 50の頂点に立つ
ムエタイのリングから『Show Me the Money』、そして『MILLI JAA EHH! ASIA TOUR 2026』まで、タイ最大のラップスターは決して引き下がらない。
昨年、23歳のMILLIはセカンドアルバム『HEAVYWEIGHT』のプロモーションに取り組んでいた。だがその準備は、レコーディングスタジオの中だけにとどまらなかった。タイ・パタヤのムエタイキャンプに移り住み、プロのファイターたちとともにトレーニングを積んだ。そして最終的に、自らリングに上がることを決意した。
肉体的にも精神的にも、その要求は過酷だった。試合直前は毎晩悪夢を見て、睡眠中にパンチやキックを繰り出していたとMILLIは振り返る。身体を限界まで追い込んでいた証だった。デビュー戦は勝利には至らなかった。それでもこの経験は、MILLIのすべてを貫くマインドセットを強く裏付けるものになった。何かに取り組むと決めたら、持てるすべてを出し尽くす。それがMILLIの姿勢だ。
その揺るがない原動力こそ、MILLIが2026年版LiFTED 50で第1位に輝いた理由に他ならない。
この1年間、彼女は数々の功績を積み重ねてきた。『HEAVYWEIGHT』はTOTY Music Awards 2026(タイの音楽アワード)でAlbum of the Yearを獲得。さらにSOT Awards(タイの音楽アワード)では、Artist of the Year、Best Female Solo Artist、Best Hip Hop/Rap/R&B Songの3部門を受賞した。
これらの受賞歴も十分に印象的だ。しかし、MILLIにとって最大の功績はタイの外で成し遂げられた。
MILLIは、韓国屈指のヒップホップ・コンペティション番組『Show Me the Money』で最終4人に残った。海外からのゲスト出演者は短期間の出演や早期敗退に終わることが多い。そんな中、MILLIは韓国トップクラスのラッパーたちを相手に、ラウンドを勝ち抜いていった。
「私はタイ出身で、MILLIが何者で、私のサウンドが何なのかを彼らに見せるチャンスは一度きりでした。どのラウンドでも全力を尽くしました。手加減はなし。すべてのラウンドに持てる全てを注ぎ込みました」と彼女は語った。
ムエタイのリングであれ、ラップステージであれ、何百万人もの視聴者の前であれ、戦い続けようとするその姿勢こそが、MILLIを他の誰とも分ける要素だ。だからこそ彼女は今、2026年版LiFTED 50の頂点に立つことができたのだ。
なお、MILLIは『MILLI JAA EHH! ASIA TOUR 2026』の一環として、8月30日(日)に渋谷Spotify O-WESTにて東京公演を行う。同公演の詳細は以下の記事でチェックできる。
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以下、LiFTEDによるMILLIへのインタビューをお届けする。
ーーこんにちは、MILLI。毎月のカバーストーリーのためにあなたにインタビューするのはこれで2度目です。LiFTEDでアジアNo.1ヒップホップMCにランクインしたことについて、どう感じていますか?
MILLI:あああああ。でも、ただ言葉だけじゃないですよね?からかわないでください。これは本当にクレイジーな出来事です。だってMCですから。つまり、ただラップしているだけじゃないということ。自分の音楽から何かを人々に届けているということ。それは私にとって、本当に大きな意味を持っています。
私はタイで生まれ育ったので、みんなが最初から聴いてきたオリジナルのヒップホップとは違います。それでも受け入れてもらえて嬉しいです。こんなにオープンマインドで、私の音楽を愛してくれてありがとうございます。1位に選んでもらえたことを感謝しています。ヤバすぎます。
ーーアルバム『HEAVYWEIGHT』のプロモーション、ミュージックビデオ、ライブ、受賞と、あなたにとって驚異的な1年でした。この1年であなたに起きた中で、一番のお気に入りの出来事は何ですか?
MILLI:『Show Me the Money』は、最近の人生で起きた一番のお気に入りです。もう6、7ヶ月くらい、本当に素晴らしい時間を過ごしました。たくさんの新しい友達や家族に出会えましたし、新しい業界のことも学びました。韓国がアジアで一番強いエンターテインメントシーンを持っているのは否定できないので、彼らからたくさんのことを学びました。番組を通して、ようやく自分自身を見つけられました。ヒップホップを一生愛していくと思います。
ーーCoachellaとLollapaloozaの両方に出演しましたね。どちらかより好きな方はありますか?その理由は?
MILLI:実はCoachellaのステージは全体が88risingの枠なので、私はショーの一部にすぎません。ジグソーパズルのピースのひとつですね。もちろん、ステージで歌ったりラップしたりする自分の持ち時間はあります。Lollapaloozaの方はKNOCK2のステージにゲストとして参加しただけ、1曲と8小節だけ。それだけです。この2つのフェスは、まったく違う雰囲気を出しています。シンガーのMILLIとしては、パフォーマンスができるのでCoachellaが好きです。でも、音楽を愛する普通の女の子としては、Lollapaloozaが好きです。新しいアーティストを発見できましたし、たくさん踊れましたから。
ーー『HEAVYWEIGHT』のプロモーションをしていた時、ムエタイの試合をして負けましたね。簡単に勝てると分かっている相手を選ぶこともできたはずなのに、とても勇敢だと思いました。全体的な経験はどうでしたか、そこから何を学びましたか?
MILLI:リングに上がる前は、本当に圧倒されていました。これはクレイジーだって、自分に言い聞かせていました。試合の2ヶ月前からまともに眠れませんでした。目を閉じるたびに身体が勝手にキックやパンチを繰り出して、悪夢を見ました。身体を働かせすぎていたせいだと思います。自分自身への敬意が増しました。それには自分でも驚きました。今なら分かります。何かをやりたいと思ったら、それはできるし、ちゃんとやり遂げられます。
パタヤでプロのムエタイボクサーたちと一緒に暮らしたので、彼らには感謝しています。みんなとても優しくて、祝福をくれました。この経験ができて嬉しいです。人生は一度きりだから、やりたいことは何でもやるべきだと思います。
ーー他のタイ出身LiFTEDカバーストーリー出演者、YOUNGOHMとThaitaniumのDABOYWAYと一緒に仕事をしたことがありますね。彼らはシーンのOG(古株)だから、業界を渡り歩く上で音楽的なアドバイスをもらったことはありますか?
MILLI:YOUNGOHMとはよく話します。わりと親しい仲です。お互い、今何をやっているかを話すだけです。韓国で『Show Me the Money』に出演していた時、YOUNGOHMは私に、ただ自分らしくやって、本当の自分を見せて、後悔しないようにと励ましてくれました。彼は本当にいい人です。自分が何をしたいかも、ちゃんと分かっています。タイの音楽を世界に届けること。彼は地元のヒーローですね。
DABOYWAYはもう伝説です。彼には感謝しないといけません。彼がヒップホップを始めていなかったら、人々はオープンマインドになれなかったでしょうから。
ーーこれまで手がけた中で最も興味深いビデオの一つが、Hai Apaporn(タイのベテラン歌手)をフィーチャーした『Hey Hey』でした。あの楽曲とビデオはどのようにして生まれたのですか?
MILLI:この曲は本当に大変でした。カルチャーのルーツと伝統的な楽曲を、どうやってヒップホップに溶け込ませてモダンにするか。ずっとそれを模索していました。プロデューサーのSpatChies、エグゼクティブプロデューサーの1-Flowと私で、スタジオでは本当にクレイジーになっていました。まるで科学者みたいでした。この形にたどり着くまで、ずっと新しいことを実験し続けました。クレイジーでしたよ。デモができた時は「うそでしょ、できた」ってなりました。こんな曲、今まで聴いたことがありませんでした。もっとこういうこともやりたいです。
ミュージックビデオのためには、インフルエンサーの友達全員に手伝ってもらいました。ただ楽しくて共感できるものにしたかっただけです。あの日は、世界が燃えているみたいに暑かったです。
ーー『Show Me the Money』に出演する海外ラッパーの多くは、早期に敗退するかゲスト出演にとどまります。しかしあなたは決勝まで進み、多くの韓国のヒップホップファンの心をつかみました。番組全体を通しての経験はどうでしたか?
MILLI:私のMSG(『Show Me the Money 12』決勝で披露した楽曲。うま味調味料になぞらえ、タイ文化と自身の個性を表現した曲)を気に入ってもらえて嬉しいです!番組でやったことはかなりリスキーでクレイジーだったと分かっています。だってK-Hip Hopでこれまで聴かれてきたものとは、全く違っていましたから。でもそう、私はタイ出身で、MILLIが何者で、私のサウンドが何なのかを彼らに見せるチャンスは一度きりでした。どのラウンドでも全力を尽くしました。手加減はなし。すべてのラウンドに、持てる全てを注ぎ込みました。それは、番組の他の出場者との競争ではありませんでした。むしろ、昨日の自分自身と競わなければなりません。だから本当に大変でしたが、番組に出られたことに感謝していますし、光栄に思っています。今の私は、以前よりずっと自分自身のことが分かりますから。
ーーあなたは多くの人から「恐れ知らず」と評されてきました。恐怖を感じながらも、それでも押し進んだ経験の例を教えてください。
MILLI:今まさに、アジアツアーのことがすごく怖いです。タイのアーティストはみんな大きなヒット曲を持っていて、1本のショーに集中すればいいんです。私にもヒット曲はたくさんありますが、自分自身のコンサートをやったことは一度もありません。だから今回は、まったく違うことをやろうとしています。アジアで9都市をやってみたらどうだろう、って。9本のショーが連続して、私を待っています。すごく怖いですが、めちゃくちゃワクワクもしています。だって、これは私に愛を送ってくれる人たちやファンに会えるチャンスですから。今度は私が、彼らに愛とパワーと良いエネルギーを返す番です。
ーーこの夏後半に予定されているアジア横断ツアーについて、もっと教えてください。各国のファンはショーに何を期待できますか?
MILLI:何も期待できないと思います。だって、何が起こるか私自身分からないので。でもひとつ期待できることがあるとすれば、1ミリ秒たりともお金に見合う価値のあるものにするということです。チケットに使われた1セントたりとも、無駄にはしません。私に会いに来たことを後悔させたりしません。楽しい時間も、泣いてしまう瞬間も、感情がぐちゃぐちゃになるような瞬間も、すべて一緒に味わうことになります。
ーーあなたはタイの女性たちにとって素晴らしいロールモデルです。もし彼女たちの誰かが音楽制作の世界に入りたいと思ったら、あなたはどんなアドバイスをしますか?
MILLI:外にいる若い女性たちへ、私の話を聞いてください。私は良い例にもなれますし、悪い例にもなれます。だから、私から良い部分を取り入れてください。音楽でも何でも、やりたいことがあるなら、始めればいいんです。想像し続けているだけなら、それはあなたの頭の中で起きているだけで、現実には起きていません。私はそんなに大人ではありません。そんなに成熟してもいません。23歳で、もうすぐ24歳になります。うつや葛藤、障害への対処の仕方は分かりません。頑張ろうとはしていますが、伝えたいのは、あなたが泣いているなら、私はあなたと一緒に泣く友達だということです。私たちは一緒に泣きます。一緒に前に進み続けます。弱くてもいいんです。でも、止まりはしません。
LiFTED JAPANでは、今年3月の「HEAD IN THE CLOUDS Music & Arts Festival in TOKYO 2026」出演時にMILLIにインタビューを行っている。『MILLI JAA EHH! ASIA TOUR 2026』東京公演が気になった人は、こちらもあわせてチェックしてほしい。
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