Interview
MILLI:「日本のファンは最高にカワイイ。でも私のライブではクレイジーに盛り上がってくれる」
HEAD IN THE CLOUDS Tokyoのために来日したタイのラップクイーンにインタビュー。
88risingが主催する音楽フェス「HEAD IN THE CLOUDS」の日本版「HEAD IN THE CLOUDS Tokyo」初開催に合わせ、タイのラッパーMILLIが来日した。
MILLIは「YUPP!」レーベル初の女性アーティストとしてデビュー。「Phak Khon」や「Sudpang」など数々のヒットを生み出し、タイ国内外の音楽チャートを席巻してきた。2022年にはタイ人アーティストとして初めて、世界最大級の野外フェス・コーチェラのメインステージに出演。その名を世界に知らしめた。
また、Tilly BirdsやStray KidsのChangbinとのコラボ曲はいずれもYouTube再生数1億回を突破。さらに「88rising」やJackson Wangとのグローバルプロジェクトにも参加するなど、国境を越えた活動を続けている。こうした実績が評価され、BBCが選ぶ「世界で最も影響力のある女性100人」に選出されたほか、タイ版「Harper's BAZAAR Women of the Year Awards」ではMusician Awardを受賞するなど、音楽の枠を超えた存在感を放っている。
そんな彼女が2025年7月にリリースしたのが、2ndアルバム『HEAVYWEIGHT』だ。同作は今年3月に開催されたタイの音楽アワード「TOTY Music Awards 2026」で年間最優秀アルバム賞を受賞。収録曲ではAwich、新しい学校のリーダーズ、アバンギャルディという日本の3組のアーティストとのコラボレーションも実現しており、日本の音楽シーンとの結びつきも強い。
今回、LiFTED JAPANは来日のタイミングに合わせてMILLIにインタビュー。日本の音楽シーンの印象をはじめ、最新アルバムのコンセプトや日本人アーティストとのコラボレーションの経緯、さらには現在のタイのヒップホップシーンの状況まで話をうかがった。
©HITC Tokyo 2026 All Copyrights Reserved. Photo by masanori naruse
ーー今回、HEAD IN THE CLOUDS Tokyoへの出演で来日されましたが、MILLIさんが普段から感じている「日本の音楽シーン」の印象を聞かせてください。タイから見て、日本の音楽はどんな存在ですか?
MILLI:日本の音楽は本当にユニークだと思います。J-Pop、J-Rock、ダブステップ、日本語ヒップホップと、ジャンルがしっかり分かれていて、しかもどれも根強い人気があります。その点は本当にリスペクトしています。それに日本のアーティストは楽曲の中で日本語をたくさん使いますよね。私の場合は英語が80%、タイ語が20%くらいだったりするので、そのあたりは対照的です。あと、どのジャンルの音楽にも「これは日本のエナジーだ」とわかるサウンドやサンプルが含まれていると思います。ユニークかつ大胆。でも、カワイイ。日本の音楽の中では、シティポップがいちばん好きですね。
ーーHEAD IN THE CLOUDSは、LAからジャカルタ、マニラ、広州と展開し、ついに日本に初上陸しました。コーチェラでの「Head In The Clouds Forever」ステージも経験されたMILLIさんから見て、このフェスが東京で開催されることにはどんな意味があると思いますか?
MILLI:まず、単純にすごく嬉しいです。日本が大好きだし、日本食は私にとって食べると一番ホっとする食べ物なんです。HEAD IN THE CLOUDSにはしばらく出演させてもらっていますが、それが東京で実現したのは、本当によかったと思います。以前にも東京でライブをしたことがあるので、日本のファンとのコミュニケーションの取り方はわかっているつもりです。よく「日本のオーディエンスはおとなしくてカワイイ」と言われますけど、私のライブは違いますよ! みんな一緒にクレイジーに盛り上がってくれる。それがすごく誇らしいんです。でもやっぱりカワイイですけどね、それが日本の皆さんのキャラクターだと思います。
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ーー88risingとの契約は、MILLIさんのキャリアにどんな変化をもたらしましたか?また、このレーベルの存在をどう捉えていますか?
MILLI:88risingと契約して、コーチェラに出演して、さらに音楽活動が広がって…という流れがありました。このレーベルがこれまでどれだけアジアの音楽シーンやアジア系アーティストをアメリカの市場で支えてきたか、その実績は誰もが知るとおりです。本当に大きな存在だと思います。Rich BrianやNIKI、もちろん友人のWarren Hueもそうですが、88risingに所属するアーティストたちはみんな、音楽もパーソナリティも本当にユニークなんです。ずっとリスペクトしてきました。その一員になれて嬉しいです。私はタイのYUPP!というレーベルにも所属しているので、88risingとYUPP!がコラボレーションして一緒に活動できているのも最高ですね。ハッピーなファミリーという感じです。
ーーさきほど日本食がお好きという話もありましたが、以前のソロライブなどで来日された時に特に印象に残ったことや、好きな食べ物、場所などはありますか?
MILLI:実は私が人生で初めてのソロコンサートをしたのは渋谷のEggmanなんです。一生忘れられない体験です。300人のお客さんと一緒に盛り上がれたので、本当にいい思い出になりました。みんな一緒に走り回って、ジャンプして、叫んで、歌って、ラップしてくれました。その後にファンミーティングもやって、すごく幸せでしたね。私のキャリアにおける歴史的な体験でした。
あと日本食は本当に大好きだから、どこに行っても恋しくなります。刺身がいちばん好き。あと熱燗も最高です。
ーー2025年7月にリリースされたセカンドアルバム『HEAVYWEIGHT』は、ムエタイや格闘技のリングをコンセプトにした作品です。「アトム級からヘビー級へ」という表現が印象的でしたが、アーティストとして「ヘビー級にたどり着いた」と感じる瞬間はどんな時でしたか?また、1stアルバム『BABB BUM BUM』からの変化も含めて、このアルバムにどんな思いを込めましたか?
MILLI:アーティストとしてどんどん「体重を増やしていく」感覚ですね。練習を重ねて、モチベーションを保って、改善し続けることで、本当の"ヘビー級"になれます。そういう意味では、私は"アトム級"からスタートして、体重を増やしながら鍛え続けた結果、今"ヘビー級"になれた気がしています。この先は世界チャンピオンのベルトを肩に乗せるイメージですね。
それと1stアルバムと2ndアルバムの違いは明確です。1stでは自分のヒストリーや、自分に何ができるかを見せること、つまり「自己紹介」が中心でした。でも『HEAVYWEIGHT』では、すべての曲で「重さ」を感じてほしかった。ビートの重さ、トピックの重さ、歌い方やトーン、ラップ、歌詞…、すべてが違う形で「ヘビー」になるように作っています。実はこのアルバムはトレッドミル(ルームランナー)の上でインスピレーションを得たんです。アルバムを通して聴くと、ウォームアップ、バーン(燃焼)、クールダウンの3つのフェーズを感じてもらえると思います。ぜひ聴いてみてください。
ーー『HEAVYWEIGHT』のコンセプトを体現するために、実際にムエタイのトレーニングを積み、ルンピニー・スタジアムでの試合にも出場されました。なぜ、ここまで本気で格闘技に取り組もうと思ったのですか?
MILLI:正直に言うと、まずリングで戦いたかったんです! ムエタイを2年間やってきて、「一度やってみたい」と思いました。人生は一度きりですからね。でも普通は、どのレーベル/事務所も自社のアーティストを本物のリングで戦わせないと思います(笑)。 だから、そのための作戦を考える必要がありました。それでアルバムのコンセプトを『HEAVYWEIGHT』にして、「私をリングで戦わせてくれたら、ほかにはない最高のマーケティングになりますよ」とプレゼンしたんです。そしたらYUPP!がOKしてくれて、実際にリングに上がることができました。
試合では負けましたけど、それは過程の一部に過ぎないんです。この挑戦を通してたくさんのことを学びました。本当のヘビー級になりたいなら、自分のすべてを注ぎ込まないといけない。シンプルにやるだけです。そして曲の中でそう歌っただけじゃなく、実際にやってみせました。つまり、それが私のスタンスなんです。なので、この挑戦ができた自分を誇りに思っています。
ーー『HEAVYWEIGHT』では、Awichさんとの「JAA EHH(peekaboo)」、新しい学校のリーダーズとの「ARMSTRONG」、そしてアバンギャルディが振付を担当した「SICK WITH IT」のMVと、日本のアーティスト3組との共作が実現しています。それぞれのコラボはどのように生まれたのですか?特に印象に残っているエピソードがあれば教えてください。
MILLI:まず「JAA EHH(peekaboo)」について少し説明させてください。「JAA EHH」はタイ語で「いないいないばあ」という意味です。この曲は、SNSで私をブロックした元カレの話ですね。でも、私は有名人で成功しているから、結局ブロックしたとしても、他のSNSだったり、YouTubeの広告や街中のビルボードだったりで、私のことが目に入っちゃうんですよね。それが「いないいないばあ」なんです(笑)。それで「ガールボス」な女性アーティストに参加してほしいと思ったのですが、真っ先に浮かんだのが日本のAwichさんでした。
次に「ARMSTRONG」でコラボした新しい学校のリーダーズとは88risingを通じて長い付き合いです。私のエナジーに匹敵できる人ってそう多くないんですよ。私はエナジーの塊だから。でも新しい学校のリーダーズにはそれができる。彼女たちは最高です。あのパワーと強さ、大胆さが好きなんです。そういうところから「ARMSTRONG」のアイデアを思いつきました。日本の招き猫とタイのナーンクワック(幸運の女神)、まったく同じものなのに国が違うと見かけも違う。そういうコンセプトの曲です。
あと「SICK WITH IT」のMVには大勢の出演者が必要だったので、お互いずっと一緒にやりたいと思っていたアバンギャルディにコラボをお願いしました。彼女たちの衣装やコンセプトは「SICK WITH IT」にぴったりだと思います。
ーー現在、気になっている日本人アーティスト、あるいは次にコラボしてみたいアーティストはいますか?
MILLI:実はちょうど、ビートボクサーのSO-SOさんとコラボしたばかりなんです。「SICK WITH IT」のリミックスをやってくれたので、各ストリーミングサービスでチェックしてみてください。
あともう一人、コラボしたい人がいます。韓国の「Show Me The Money」で出会った日本人のラッパー、Wez Atlasです。番組が終わった後も連絡を取り合っていて、必ず一緒に何かリリースします。ただ、いつになるかはまだわかりません(笑)。
ーー今年のTOTY Music Awardsでは『HEAVYWEIGHT』がYoungOhmさんのアルバムと年間最優秀アルバム賞を争うなど、タイのラップシーンの層の厚さを感じます。MILLIさんの目から見て、今のタイの音楽シーン、特にラップ/ヒップホップシーンはどんな状況にありますか?
MILLI:まず、個人的なことを言うと、私の音楽を聴いてくれる日本人のリスナーがどんどん増えていると感じています。オープンマインドに私の言語や文化を受け入れてくれていることを本当に感謝しています。
そして、今のタイのラップ・ヒップホップシーンについてですが、端的にいって、やり続けている人たちが変わらず活動を続けているという感じです。それに加えて、最近はR&BやT-Popも盛り上がってきています。なので、私は今、みんなをひとつにまとめたいと思っています。「Show Me The Money」に出たことは大きな刺激になりましたし、タイのラッパー仲間たちもあの番組や、もしかしたら私からもインスピレーションを受けてくれていると思います。今年はタイのヒップホップシーンをもっと大きく、もっと強くしよう、とみんなで話している最中です。やっていきますよ!
ーー日本のヒップホップファンに「この人を聴いてほしい」と紹介したいタイのアーティストはいますか?ラッパーに限らず、プロデューサーやシンガーでも構いません。
MILLI:Flower.farですね。彼女はもうすぐ日本向けのプロジェクトを公開する予定だと聞いています。それにこれまでにも日本のアーティストともたくさんコラボしています。すごくR&Bテイストの音楽だし、きっと気に入ると思いますよ。ぜひ聴いてみてください。近いうちに日本でコンサートもやるはずです。
ーーBBC「世界で最も影響力のある女性100人」選出、コーチェラ、Harper's BAZAARアワード受賞と、若くして驚異的なキャリアを築いてきましたが、MILLIさんがこれから先に見据えている目標を教えてください。
MILLI:うーん、グラミー賞の受賞ですかね? 冗談ですけど(笑)。正直、具体的にはわかりません。アワードで賞をいただくというのは、曲に心も魂もメンタルヘルスもフィジカルも全部注ぎ込んできた自分自身への、そして支えてくれるみんなからの、大きな「ありがとう」のようなものだと思っています。言ってみれば「あなたはこれだけ頑張ったんだよ」という証明書のようなものなんです。
でも、もし受賞できなかったとしても、私は私のままです。だからこれからもやり続けるだけですね。もちろんもらえる賞は全部もらいに行きますよ。でも私にとっていちばん大事なのは、応援してくれるみなさんの存在です。それが私にとって本当の意味で"賞をいただく"ということなので、ずっと大切にしていきます。
ーー最後に日本のファンに向けてメッセージをお願いします。
MILLI:日本のみなさんが私を応援してくれることを嬉しく思っています。そして、愛をくれて、私のことを好きでいてくれることに感謝しています。これからもベストを尽くしながら成長し続けます。絶対に止まりません。声が出なくなるまで、一生アーティストであり続けます。そして、支えてくださる皆さんと一緒に成長していきたいと思っています。本当にありがとう。
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