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Scene Report

¥ellow Bucksが東京に刻んだ"Who I Am"。初の東京ワンマンライブレポート

当日は約1時間半に渡り、1万人規模のアリーナ『TOYOTA ARENA TOKYO』が熱狂に包まれた。

LiFTED | 竹田賢治 / Photo by cherry chill will. | 28 4月 2026


ラップスタアの冠を手にして以来、数々のヒップホップフェスでヘッドライナーをつとめ、今年通算4枚目となるアルバム『Wataru』をリリースするなど、ジャパニーズ・ヒップホップ界の顔役として着実にキャリアを積み上げてきた¥ellow Bucks。16年というキャリアを経て、“ヤングトウカイテイオー”から新たにヒップホップアイコンへと進化を遂げようとしている彼が、4月10日(金)に東京初のワンマンライブ『Who I Am』を開催した。

¥ellow Bucksの本名である「和」と日本の「和」の精神性をモチーフにした『Wataru』の先行シングルから名付けられた本公演は、昨年ローンチした1万人規模のアリーナTOYOTA ARENA TOKYOで実施。自身のフッドとも言える愛知や神奈川CLUB CITTAでの公演に続き、今回が3回目のワンマンライブとなる。その名が示す通り、これまでの公演と比べても特別な節目となった東京初ワンマンの会場には、開催を待ち侘びていた多くのヘッズが駆けつけた。

Photo by cherry chill will.


開演時間を迎え、「WHO I AM」の文字が浮かぶ透過LEDの幕が開くと¥ellow Bucksがステージに。公演の表題曲「Who I Am」を披露すると、フロアは早くも熱狂に包まれる。続け様にCFN Malikを迎えたスキルフルな楽曲「Driftin’」へ。そのままMCを挟む間もなく、一気呵成に楽曲を畳み掛けていく。この日にかける彼の覚悟が伺えるラップの熱量に、フロアのヘッズも惜しみないシンガロングで応える。Yvng Patraをフィーチャリングした「8UP」では、ライブ前半のハイライトとも言えるほどのシンガロングが巻き起こった。

印象的だったのは、次々と繰り出される楽曲のどれもが聴き馴染みのある曲ばかりだったことだ。「GIOTF」や「ICON」、「My Resort」など、ヘッズであれば誰もが一度は耳にしたことがあるだろう楽曲が続く。さらにはKaneeeとつくりあげた名曲「Blessed」や、Eric.B.Jr.とのアンセム「Yessir」といったコラボ曲が披露されると、その度に会場の熱は段違いに跳ね上がる。シーンの最前線で活躍し続ける¥ellow Bucksの傑出した力を存分に感じられた瞬間だった。

ライブ中盤に差し掛かると、獅子に扮した2人の歌舞伎役者が登場。歌舞伎演目のなかでも豪快な演出で知られる「連獅子」の毛振りのパフォーマンスで、アルバム『Wataru』が纏う「和」の精神性を視覚的に体現した。勢いそのままに「Kabukimono 」、「Katana」、「456」と『Wataru』の楽曲が続き、これからの日本のヒップホップを背負って立とうとする彼の気概が伝わってくるシークエンスとなった。

Photo by Daiki Miura

ライブのインタールード的に始まったDJ SIDのDJタイムでは、Madam Wooの妖艶なダンサーたちが姿を見せ、会場の様相をナイトクラブのフロアに変えていく。「チーム友達 東海Remix」や「WAVEBODY(Remix)」、「力をくれ」などクラブバンガーが立て続けにミックスされ、落ち着く間もなくライブは終盤へ。

興奮冷めやらぬライブ後半の口火を切ったのは、今を輝くヒップホップの旗手たち4人が揃った「Still In The City」だ。DJ SIDとMadam Wooのダンサーたちによるインタールードを終え、Candee、eyden、Watsonとともに¥ellow Bucksが再度ステージに舞い戻ると、会場は割れんばかりの歓声に包まれる。彼らの圧巻のパフォーマンスにあてられるように、会場はさながらフェスのフロアと化し、もはや制御不能な熱気に満ちていく。LEDスクリーンに映し出された4人の立ち姿は、目にするだけで鳥肌が立つほどの絵になる光景だった。

続けて、「その場でいいから走れる?友達呼んでるから!」とBenjazzyを呼び込むと疾走感あふれる「Run It Up」へ。2人の卓越したフロウに乗せられ、アリーナのフロアを揺らさんばかりに走るヘッズたち。ここまで20曲以上もの曲が披露されているにもかかわらず、¥ellow Bucks自身のエネルギーも、ヘッズたちのレスポンスも衰え知らずのままだ。

ライブ終盤には「(会場に)来てるかわいい子のネイルが見たい」というMCに続いて、ストリート・プリンセスの名をほしいままにしているLANAとの楽曲「New Nails」を披露。官能的なムード漂う彼女の歌声に、会場の誰もが魅了された。そして彼女とのパフォーマンスが終えると、再びフロアを熱狂させるサプライズが。YZERRとJP THE WAVYの両雄がステージに駆けつけ、「Miss Luxury」へ。誰もが予想だにしなかったこの演出に、この日最高潮の盛り上がりを見せた。

Photo by Daiki Miura

約1時間半にも及んだ公演は、いよいよクライマックスを迎える。『Wataru』のなかでも自身が最も思い入れのある曲だと語る「Moshimo」から、AIを迎えたエモーショナルなナンバー「THE MOMENT」を歌い上げると、このワンマンライブまでの紆余曲折を感じ取ったかのようにフロアは静かな感動に包まれていく。「このワンマンはすごい数の人たちの力が働いてて、この日のために準備してきたパワーが集まってる。それを生かすか殺すかは俺次第」と力強く言い切った¥ellow Bucks。心に響くMCに会場中からエールが贈られるなか、これからの希望に満ちた行く末を暗示する「Passport」でフィナーレを迎えた。次なるフェーズへと突き進む彼の覚悟は、彼の背中を見守るヘッズたちに確かに届いたはずだ。

Photo by cherry chill will.