2021年に公開され、最終興行収入22.3億円を記録したヒットアニメ映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』。その続編『キルケーの魔女』が2026年1月30日の公開から約1か月で前作の最終成績を突破する大ヒットを記録している。
注目はそのOPテーマだ。起用されたのは、アメリカ人R&Bシンガー、SZAの「Snooze」。R&Bやヒップホップのリスナーにはおなじみの名前だが、ガンダムファンの中にはまだ馴染みがないという人もいるだろう。この機会に改めて彼女のキャリアを振り返りながら、「Snooze」以外にも聴くべき楽曲を紹介したい。
◤前作最終興行成績を突破◢
— 機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ (@gundam_hathaway) February 28, 2026
『機動戦士ガンダム #閃光のハサウェイ #キルケーの魔女』公開初日から29日間で
興行収入:22.4億円
観客動員:134万人
を記録し、第1章『閃光のハサウェイ』の最終興行成績を突破いたしました
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累計グラミー7冠。現行R&Bシーンを牽引するSZAとは?
SZAは米ニュージャージー州メイプルウッド育ちのシンガーソングライター。R&Bを軸にしながらもジャンルの壁を軽々と越えていく歌声と内省的な歌詞で、世界的な支持を集めている。
キャリアの始まりは2012年、自主制作EP『See.SZA.Run』にさかのぼる。翌年にはTDE(Top Dawg Entertainment:かつてKendrick Lamarが所属)と契約。同レーベル初の女性アーティストとして注目を集めた。2017年にメジャーデビュー・アルバム『Ctrl』が全米ビルボードR&Bアルバム・チャート1位を獲得し、第60回グラミー賞で5部門にノミネート。2022年にリリースされた2ndアルバム『SOS』は全米ビルボード200初登場1位、累計13週にわたって首位を記録し、R&B/Hip-Hopアルバムの女性アーティストとしてはホイットニー・ヒューストン以来となる歴代屈指の1位記録を打ち立てた。また同年、Doja Catとの「Kiss Me More」でキャリア初のグラミーを受賞すると、2024年の第66回グラミー賞で3冠、2025年には「Saturn」で最優秀R&B楽曲賞を2年連続受賞。そして2026年2月にはKendrick Lamarとの「Luther」で年間最優秀レコード賞を含む2冠を獲得するなど、累計グラミー7冠という輝かしい実績を築き上げている。
ブラックミュージックとアニメの蜜月。「Snooze」がガンダムOPに届くまで
ヒップホップやR&Bといったブラックミュージックとアニメは、実は数十年にわたって互いに影響を与え合ってきた。Wu-Tang ClanのRZAはドラゴンボールZに黒人コミュニティが共感する理由を自著で分析し、自ら『アフロサムライ』のサウンドトラックも手がけている。また、渡辺信一郎が監督した『サムライチャンプルー』はNujabesの音楽とともにヒップホップとアニメの融合を体現した作品だ。近年もMegan Thee Stallionが『僕のヒーローアカデミア』好きを公言するなど、その距離はますます近づいているが、SZAの楽曲にもアニメとの接点もある。
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— TINA SNOW (@theestallion) August 8, 2019
2022年の大ヒット曲「Kill Bill」は、映画『キル・ビル』にインスパイアされた作品で、元恋人への執着と衝動が歌われる。そのMVには90年代アニメ風のシーケンスが含まれているが、これは『キル・ビル』に登場するキャラクター、オーレン・イシイのアニメシーンへのオマージュだ。
また、今回『閃光のハサウェイ キルケーの魔女』のOPテーマに起用された「Snooze」は、アルバム『SOS』の収録曲だ。映画の公開直前には、柔らかなメロディと繊細なヴォーカルで"恋人への深い愛情と「離れたくない」という切実な想い"を描いた同曲と、映画の世界やキャラクターのどこかミステリアスな描写が交わるスペシャルPVも公開されている。
今聴くべきSZA楽曲5選
Love Galore feat. Travis Scott(2017)
Travis Scottを客演に迎えたデビュー・アルバム『Ctrl』収録曲。トロピカルなビートと遊び慣れた男に振り回される女性の視点から綴られた歌詞、Travis Scottのオートチューンを効かせた特徴的なヴァースの組み合わせが絶妙で、全米ビルボードHot 100で32位を記録した。第60回グラミー賞では最優秀ラップ/歌唱パフォーマンス賞にノミネートされている。
2. Drew Barrymore(2017)
タイトルはそのまま俳優のドリュー・バリモアの名前に由来する。SZAは彼女が主演した映画『ボディヒート(原題:Poison Ivy)』に着想を得て、劇中のキャラクターが抱える感情と自分自身の感情を重ねたという。自分の容姿や振る舞いに対して繰り返し謝るような率直な歌詞が特徴で、『SOS』の壮大なスケールとは対照的な、等身大の一曲に仕上がっている。ちなみにMVにはBarrymore本人がカメオ出演している。
Good Days(2021)
『Ctrl』以降、次作『SOS』までの5年のブランクのさなかに生まれた楽曲。全米ビルボードHot 100で9位、Spotifyグローバル・トップ50で最高5位を記録した。孤独から抜け出そうとする意志を歌った内省的なこの曲の制作には、イギリス出身のマルチプレイヤーとして知られるJacob Collierが参加。また、曲の終盤ではJacob CollierとKiana Ledéの「In Too Deep」がサンプリングされている。
Saturn(2024)
2024年2月にサプライズ・リリースされ、のちに『SOS Deluxe: LANA』に収録された楽曲。全米ビルボードHot 100で最高6位を記録し、SZAにとって10曲目のトップ10ヒットとなった。タイトルの「Saturn(土星)」は、占星術で約29.5年周期に訪れるとされる「サターン・リターン」に由来する。人生の転機や新たな試練の始まりを意味するこの概念を背景に、SZAは地球での生活への幻滅と、どこか別の場所で生き直したいという願望を歌っている。第67回グラミー賞の最優秀R&B楽曲賞受賞曲。
All The Stars with Kendrick Lamar(2018)
マーベル映画『ブラックパンサー』のサウンドトラック・アルバム『Black Panther: The Album』に収録されたリード・シングル。Kendrick Lamarとの共作で、プロデュースはKendrickの長年の盟友であるSounwaveと、Al Shuxが手がけた。Billboard Hot 100で最高7位を記録し、第61回グラミー賞では年間最優秀レコード賞・年間最優秀楽曲賞を含む4部門にノミネート。さらにアカデミー賞とゴールデングローブ賞でもそれぞれ最優秀楽曲賞候補に挙がった。壮大なストリングスの上にSZAの浮遊感抜群のボーカルが重なるこの曲は、アメコミ映画のスケール感にも、R&Bの親密さにもフィットする懐の広さがある。





