チャイニーズ・ヒップホップは、今や中国国内で人気が高まり続けているジャンルだ。そうした人気を背景に中国のラッパーの中には、中国中央電視台(CCTV)が放送する世界最多視聴者数を誇る番組『春節聯歓晩会(春晩)』のオンライン版に出演した者さえいる。
2017年に『中国新说唱(The Rap of China)』がチャイニーズ・ヒップホップの人気を爆発的に高め、その後『说唱新世代(Rap for Youth)』など様々なラップバトルのテレビ番組が続いた。中国のトップラッパーの多くはこれらの番組を通じて有名になったが、GAIやJony Jはその代表的なラッパーとして知られている(おそらくヒップホップが好きであれば、チャイニーズ・ヒップホップにほとんど興味がない人でも彼らの名前を一度は耳にしたことがあるだろう)。

しかし、チャイニーズ・ヒップホップ・シーンは常に男性が圧倒的多数を占めてきた世界であり、女性の活躍は男性に比べて限定的だった。その時代を変える契機となったのが、2021年7月に放送された中国初の女性限定ヒップホップバトル・オーディション番組『黒怕女孩(Girls Like Us)』だ。
中国の動画配信サービス・Tencent Videoが制作した同番組は、放送前から当時、2年以上にわたってビーフ(確執)を抱えていた女性ラッパーのFree CとMC Rocketの出場が取り沙汰されるなど、現地の注目を集めていたが、最終的には38名の女性ラッパーが参加(日本から唯一の日本人ラッパーとして吉田凜音も参加)。Jackson Wang(王嘉尔)、Masiwei(马思唯)、Vinida(万妮达)、曾轶可という豪華なプロデューサー陣のもと、女性ラッパーたちは自らのチームを結成し、音楽理念と女性としての姿勢を表現する戦いを繰り広げた。
なお、番組は2021年9月まで放送され、最終的にJinx Zhou(周君怡)、林凡 (Marco)、叶晓粤(Ayuko)で構成されるグループ「日出俱乐部(Sunrise Club)」が勝者の座を獲得。中国の女性ラッパーたちにとって、自らの名を刻む歴史的な瞬間となった。
その後、「日出俱乐部(Sunrise Club)」の3名のメンバーは、Tencentとアジアのヒップホップシーンを牽引する88risingが共同設立したレーベル「Sunrise Club」と契約を結んだ。しかし2023年頃、レーベルの活動停止に伴い契約が終了したとみられ、現在メンバーたちはそれぞれが独自のキャリアを歩んでいる。








