Close X

Asia

ヒップホップ新興国ネパールでファン参加型ビーフが人気を博した理由

ネパールで2021年に起きたトップラッパーたちによるビーフはSNS時代のヒップホップ文化を先取りしていた!?

LiFTED | Roger Yiu | 21 1月 2026


Translated from here

ヒップホップにおける「ビーフ(Beef)」とは、ラッパー同士が楽曲を通じて互いをディス(批判)し合う対立のこと。アメリカでは、2024年にKendrick LamarとDrakeが繰り広げたビーフが大きな話題となり、Kendrick Lamarの「Not Like Us」がBillboardチャート1位を獲得するなど、音楽シーン全体を揺るがす現象となった。こうしたビーフは、ラッパーの技術や創造性を競う場でもあり、ヒップホップ文化の重要な要素として認識されている。

このビーフ文化は、アメリカだけでなく世界中のヒップホップシーンで見られる。2021年、ネパールでも注目すべきビーフが勃発した。

ネパール初のヒップホップ楽曲「Meaningless Rap」は、1992年に後に「ネパールラップのゴッドファーザー」と称されることになるわずか15歳だったGirish Khatiwadaによってリリースされた。ニューヨークの貧困地域から生まれたヒップホップは、主に英国軍に所属するネパール人兵士や、アメリカに住む余裕のあった一部の幸運な人々によってネパールにもたらされた贅沢品だった。

こうした背景を持つネパール初のヒップホップアルバムは、2000年にRappaz Unionによってリリースされた。これは、アメリカのグループ、The Sugarhill Gangが最初のヒップホップアルバムとして広く認識されるデビュー作を発表してから、実に20年後のことだった。

しかし、同国のヒップホップシーンは、2020年代に入って国際的な評価を獲得し始めた。その先頭に立つのが、カトマンズ出身のプロデューサー/ソングライター/サンプルメーカーであるAasis Beatsだ。Central Cee、Tommy Richman、$uicideboy$といった人気アーティストの作品にかかわってきた彼はBillboardチャート(トップR&B/ヒップホップアルバムチャート)で1位獲得曲をプロデュースしたネパール初の音楽プロデューサーとして知られる。

こうした国際的な成功により、ネパールヒップホップは世界の音楽シーンにおいて存在感を示し始めているが、現在のネパールヒップホップシーンに大きな影響を与えることになったのが、数ヶ月にわたって3人のトップラッパーたちが激しく対立した先述の2021年に起きたビーフだ。

当時、ネパール人ラッパーDongは圧倒的なフロウを持ち、自分の名を世に知らしめることに全力を注いでいた。B-Boyから転身したラッパーである彼は、2017年のデビュー以来、卓越したフロウと巧妙なワードプレイでネパールのヒップホップシーンにおいて存在感を放ってきた。

2021年4月、Dongが公開した動画に、もう一人のビッグネームであるネパール人ラッパーNastyを不快にさせる歌詞が含まれていた。5月末、DongはNastyへの攻撃を続け、彼がInstagram Liveに頻繁に出演する癖を揶揄した。6月上旬、NastyはSlim Bossとの楽曲でDongへのディスを繰り出し、ビーフに火をつけた。


翌日、自身が立ち上げる予定のレーベル「Pratibimba」をプロモーションするため、Dongは楽曲「Drillshot」をリリース。この曲は彼の象徴的な反骨精神と不敵な態度が全面に出ている。Dongの盟友であるプロデューサー、RollerXが手がけたループ感のあるメロディックなビートに乗せて、「Drillshot」は英語とネパール語でハードに攻める。「Drillshot」は両ラッパーのファンから圧倒的な反応を得て、25万回以上の再生回数を記録し、さらに増え続けた。

次はNastyの番だった。彼は楽曲「Khop」を発表。じわじわと燃え上がるトラップビートに乗せて、NastyはDongを激しく攻撃したが、その流れ玉に当たったのが長年確執があったEaseだった。


Easeはディスを黙って受け止めることができず、翌日「DISStress」を発表してNastyに反撃。一方、Dongもすぐに反応し、再びRollerXがプロデュースした「Endshot」を投下。それを受けて、Easeは「Endshot」が公開された同じ日に「Antim Sujhab」で強烈な一撃を加え、Nastyは窮地に立たされたように見えた。


しかし、Nastyは沈黙しなかった。B Beatsによる3つの異なるビートに乗せた8分間のフリースタイル楽曲「Unwritten」でカムバック。これが全楽曲の中で最もハードだとする声も上がったが、このビーフはここでは終わらなかった。

なぜなら3人のラッパー全員が、ファンに楽曲へのリアクション動画を投稿させていたからだ。これがヒップホップのビーフに全く新しい要素を加えた。リスナーたちは進行中のバトルに直接関与し、他者の意見に影響を与えることができるようになったのだ。

つまり、ファンが単なる観客ではなく、ビーフの展開に影響を与える参加者となるという、このSNS時代のヒップホップ文化を先取りしていたと言える現象について、当時我々はこう記している。

「これは新しい領域だが、歓迎すべきことだ。なぜなら、これが未来の形であり、すべてがオンラインで展開されているからだ」とー。