ヒップホップとアニメは、2台のターンテーブルとマイクのように切っても切れない関係にある。一見つながりのなさそうなこの2つだが、実は数十年にわたって互いに影響を与え合ってきた。ヒップホップアーティストたちはアニメのテーマソングやセリフをサンプリングし、アニメの制作者たちはヒップホップの持つ荒々しさや生々しさからインスピレーションを受けてきたのだ。
本稿では、その相思相愛ぶりを象徴する5つのアニメ作品を紹介する。
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ドラゴンボールZ
Wu-Tang Clanがカンフー映画のサンプルをヒップホップに持ち込んだことで、その扉は大きく開かれた。それから数十年後、子供たちは映画『少林寺三十六房』の上映にこっそり潜り込む代わりに、学校をサボってCartoon Network(米国のアニメ専門チャンネル)やAdult Swim(その深夜枠)でアニメを観るようになっていた.
中でも『ドラゴンボールZ』は絶大な人気を誇った。RZAは著書『The Tao of Wu』で、黒人コミュニティがこの作品に惹かれる理由をこう分析している。
「これは史上最も奥深いアニメのひとつだ。孫悟空が実はサイヤ人という古代の種族の末裔で、遠い惑星から来た銀河系最強の戦闘民族だったことが明かされる。つまり孫悟空は超人的な力を秘めているのに、本人はそれに気づいていない。頭を打った影響で記憶を失い、自分が何者なのかわからなくなっているからだ。ところがある日、極限まで追い詰められた彼は、ハルクのように覚醒し、スーパーサイヤ人へと変貌を遂げるんだ」
4
NARUTO-ナルト-
ドラゴンボールZがジェネレーションXの心を掴んだとすれば、『NARUTO-ナルト-』はZ世代以降の世代に刺さった作品だ。ラッパーたちがNARUTOを愛する理由は3つある。「忍者であること」「逆境から這い上がる姿」そして「己の信念を貫く姿勢」だ。Soulja Boyに至っては、2011年に『NARUTO-ナルト-』をコンセプトにしたミックステープを制作するほど入れ込んでいた。
一方、『NARUTO-ナルト-』側もヒップホップへの愛を隠さなかった。作中に登場するキラービーは、世界一のラッパーになることを夢見る強力な忍だ。彼は戦闘の真っ最中でも手を止め、思いついたライムをノートに書き留めるほどラップに情熱を注いでいた。顔にタトゥーまで入れているキラービーは、現代のマンブルラッパーたちの中に放り込んでも違和感なく溶け込めそうだ。
3
アフロサムライ
アーティストの岡崎能士は、少年時代からA Tribe Called QuestやJ Dillaといったクラシック・ヒップホップ、そしてソウルミュージックを愛聴してきた。やがて彼は、戦国時代に実在したとされる黒人侍を題材にした作品を構想する。こうして生まれたのが『アフロサムライ』だ。同作は1998年の発表以来、今なお根強い人気を誇っている。物語の設定はこうだ。
「主人公アフロサムライの父親は「一番」のハチマキを持っていた。「一番」に挑戦できるのは「二番」のハチマキを持つ者だけで、「二番」には誰でも挑むことができる。幼いアフロサムライは、ジャスティスという男に父親を殺され、「一番」のハチマキを奪われる瞬間を目撃する。その日から、アフロサムライは「二番」のハチマキを手に入れ、いつか父の仇を討つことを心に誓った」
『アフロサムライ』は、RZAがサウンドトラックを手がけた傑作アニメシリーズだ。作品全体にヒップホップの精神が息づいている。
2
サムライチャンプルー
2004年から2005年にかけて全26話のみの放送だったが、『サムライチャンプルー』は江戸時代の日本と現代ヒップホップを見事に融合させた。監督の渡辺信一郎は、ジャンルの金字塔となった『カウボーイビバップ』を完成させた直後で、次は真逆の作品を作りたいと考えていた。その結果生まれたのが、ヒップホップに影響を受けた3人の主人公が江戸時代を駆け抜ける、レトロフューチャーな傑作だった。
フウは元気いっぱいの15歳の少女。侍たちに絡まれていたところを、ブレイクダンスを思わせる型破りな剣術を使うムゲンに助けられる。そこにジンも巻き込まれ、騒動の中で起きた死亡事故により、ムゲンとジンは処刑されることになってしまう。フウは2人を救い出し、こうして3人は「ひまわりの匂いのする侍」を探す旅に出る。
かつて渡辺監督は、こう語っている。
「江戸時代の侍と現代のヒップホップアーティストには共通するものがあると思う。ラッパーは1本のマイクで未来を切り開き、侍は1本の刀で運命を決する」
また、彼はサムライチャンプルーの音楽とビジュアルの両面でヒップホップへのリスペクトを表現した。オープニングテーマは、「ローファイ・ヒップホップ」の先駆者として知られるNujabesが手がけている。また、3人の主人公たちはグラフィティを文字表現として用いている。
全編を通して素晴らしい作品だが、特に最終3話は、その複雑な構成と独創性で高く評価されている。
1
ヒプノシスマイク -Division Rap Battle
『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』は、ヒップホップとオーディション番組とアニメが融合した異色の作品だ。2017年にスタートし、現在もプロジェクトは継続している。舞台設定はこうだ。
「戦争終結後、女性が政権を掌握し、あらゆる武器が廃絶された世界。争いごとを解決する唯一の手段は、人の精神に干渉し思考を操る”ヒプノシスマイク”を使ったラップバトルだけとなった。かつて伝説的なラップグループ「The Dirty Dawg」として活動していたメンバーたちは袂を分かち、4つのディビジョンに分かれて覇権を争うことになる」
プロジェクト開始時、各ディビジョンは投票券付きの楽曲をリリースした。ファンによる投票の結果、麻天狼が勝利を収め、勝利記念アルバムがリリースされた。
アニメのラッパーというコンセプトにより、音楽、ライブ、ゲーム、漫画、グッズと展開の可能性は無限に広がっている。アニメーターがファンの声を取り入れながら新たなチームやラッパーを生み出せるという事実からは、ヒップホップとアニメの未来の形が見えてくる。





