台湾を拠点に活動するNICKTHEREALは、ひとつの道に縛られることを拒み、独自のキャリアを築いてきた。シンガー、ラッパー、プロデューサー、ダンサー、ディレクター、スタイリスト、デザイナー、そして自らの宇宙を統括するキュレーターとして、単に音楽をリリースするだけでなく、その周りに世界を構築している。
Nick Chouとして多くの人に知られた彼は、長年にわたり自らを定義し直し続け、今や唯一無二のクリエイターへと変貌を遂げている。その作品はかつてないほどパーソナルで、意志に満ちており、大胆だ。
そんなNICKTHEREALが今月のLiFTEDカバーストーリーに登場。ヒップホップカルチャーとの生涯にわたる関係、家族からの影響、自分にとっての「リアル」とは何か、さらに創作行為そのものが自分を生かし続けている理由について語ってくれた。
ーーヒップホップにハマったきっかけを教えてもらえますか?
NICKTHEREAL:正直、「これだ!」という瞬間を特定するのは難しいかな。子どもの頃からカルチャーと音楽に夢中だったんだ。レコードショップに入り浸り、すべてのジャケットに魅了されていたよ。特にカッコいいデザインや、グラフィティが描かれたものが好きだった。B-boy、DJ、グラフィティカルチャーには、ずっと強く惹かれてきた。一言で言えば、カルチャー中毒だよ。音楽オタクだし、生涯現役のヒップホップファンだ。
ーーお母様は台湾のエンターテインメント業界にいたそうですね。お母様から何を教わりましたか?
NICKTHEREAL:みんな、僕がいわゆるセレブリティ家庭で育ったと想像するけど、実際はそうじゃなかった。確かに、いつも音楽やカッコいいギア、トレンド感のあるものが周りにあったよ。それが家族のカルチャーであり、ライフスタイルだから。ただそれだけさ。でも、母と僕はこの道を歩むことについて話し合ったことは一度もなかった。業界のおじさんやおばさんを紹介して口利きをするようなことも、一切なかった。「ただ自分らしくいなさい」というのが母の唯一のアドバイスだった。正直、うちの母親はめちゃくちゃクールだよ。本物のアーティストさ。自然体だし、虚飾がない。本当に周りの雑音を何も気にしないんだ。

ーーNick ChouからNICKTHEREALに変わっていった過程について、教えてください。
NICKTHEREAL:正直に言えば、自分でやり始めた瞬間からすべてが変わったよ。自分でA&Rをやって、プロデュースもすることで、完全なクリエイティブーーコントロールを手に入れたんだ。
ーーアーティストとして最も"リアル"を感じるのは、どんな瞬間ですか?
NICKTHEREAL:自分のことを「セレブリティ」だと思ったことはないよ。僕はクリエイターなんだ。創作のあらゆる瞬間が、自分にとって自然でリアルなんだ。それが自分のやり方さ。曲を書いて、プロデュースする。MVをディレクションし、ビジュアル、アートディレクション、スタイリングを考える。そして、アルバムカバーをデザインし、マーケティング、ステージ、イベントを計画する。NICKTHEREALは、自分の得意とするすべてを実行できるブランドなんだ。創作し続けることでしか、生きている実感が持てないよ。
Rock、Pop、ヒップホップ、何でもやる。ひとつのアイデンティティに当てはめようとして、頭を抱えたこともあった。でも、これが自分の在り方なんだと気づいた。クリエイターであるということが僕にとって最も「リアル」な姿だよ。
ーーアルバム『LOVE RAGE HOPE』について聞かせてください。
NICKTHEREAL:初のコンセプトアルバムであり、夢が叶ったプロジェクトだね。すべてが2000年代のRockのバイブスを中心に展開していた。あの時代に深く影響を受けた自分にとって、いつかこんな音楽を作ると自分に約束していたんだ。このアルバムはその約束を果たすためのものだね。
そういう意味では、血に刻まれたものだから、プロセスは驚くほど自然なものだったよ。あの時代には強烈なカルチャーの熱量があったし、ポスターで埋め尽くされた部屋で、MTVを見て、レコードショップでCDを買い、ウォークマンでMP3を聴いていた。スケートカルチャーとエクストリームスポーツの時代だったと思う。それにあのサウンドはどこにでもあったはずなんだ。あの時代を生きた人なら、このアルバムは多くの記憶を呼び起こすと思うよ。あと、そうでない人には、今の多くのトレンドの原点である、本物のY2Kを体験してほしいかな。
ニュー・メタル、オルタナティブロック、ポップパンク、ポストハードコア、エモ。どれも子どもの頃に好きだったものだよ。今それらを再解釈することは、あの学生時代に引き戻される感覚がある。おもしろいことに、成長期に夢中だったバンドが軒並みカムバックを果たし、ロック/メタルの人気がまた世界中で復権している。
アルバムタイトルの"LOVE RAGE HOPE"が示す通り、雰囲気とメロディーはこれまでの作品よりずっとダークなんだ。でも、そのダークさの中に、強烈な希望の感覚がある。自分にとって、ロックとは、感情を解き放つことで出口を見つけるものなんだ。この音楽が、そうした感情の中を歩む自分を導いてくれた。過去の作品の多くが、自分を癒すことをテーマにしていたように、このダークさは今の自分の精神状態を反映しているんだ。そのダークさを受け入れたから、向き合えた。だから、その感情を音楽を通じて解放する。それが純粋なカタルシスなんだ。最高の気分さ。
このアルバムはミレニアル世代のためのものだし、あの美しい時代へのトリビュートなんだ。
ーーツアーで披露される歌とダンスが融合した壮大なステージが語り草になっています。ファンにとって特別なライブショーを作るうえで、どんなことを大切にしているのでしょうか?
NICKTHEREAL:僕にとって、コンサートとは作品を祝う場だ。クリエイターの本来の意図が最も純粋に体現される、究極の表現の場でもある。コンサートをひとつの巨大なアート作品として扱っていて、そこでディレクターとしてのビジョン、スタイリング、美学、そしてプロデューサー、パフォーマー、デザイナーとしてのスキルまで、自分のすべてを見せる。みんな僕のショーに「フレッシュ」さや「トレンディ」さを期待するけど、実際に来た人たちは、感情的な部分に心を動かされることの方が多いんだ。正直、ステージ上の僕は信じられないほど剥き出しでリアルだよ。内面がそのまま、観客の前に晒される。日常生活よりも、ずっと深いところまで。それがライブ体験を他とは違うものにするカギなんだ。
ーーシンガー、ラッパー、ダンサー、プロデューサー、DJにA&Rまでこなしていますが、これからこの業界を目指す人にアドバイスするとしたら?
正直、決まった型なんてないよ。みんなそれぞれの道がある。大切なのは、なぜこれをやりたいのかを明確にすることだね。やり続けたとしても報われる保証なんてない。それでもやりたいと思えるかどうか。そこが大事なんだ。この業界で本当に成功できる人は、ほんの一握りだ。結果よりプロセスを愛さないと、続けられない。



