9月号のカバースターは、ヒップホップ界屈指の実績を誇るプロデューサー、Jahlil Beats。
Roc Nationに所属し、Anderson .Paakとともに「Bubblin」でグラミー賞受賞歴も持つ彼は、これまでにMeek Mill、50 Cent、Lil Wayne、Fabolous、Chris Brown、Rick Rossをはじめ、数多くのアーティストの作品を手がけ、数百万枚のセールスを記録してきた。
また、Keith Ape、Jay Park、Dok2といった韓国のラッパーとも仕事をしており、最近ではLil Cherry & GOLDBUUDAのシングル「Yummy 88」も手がけている。
今回は、ルーツであるフィラデルフィア・エリアの話から、ビートメイキングとの出会い、ブレイクまでの道のりを聞いた。そして、アジアのヒップホップを代表するスターたちと仕事をするため、東洋へと活動の場を広げた経緯についても語ってもらった。
ーーフィラデルフィア・エリアで生まれ育ったあなたにとって、一番「フィリーらしい」ところはどこですか?
Jahlil Beats:実は生まれ育ったのはペンシルベニア州チェスターなんだ。フィリーから20分ほどの街だけど、フィリーは間違いなく僕を地元の人間として受け入れてくれた。この辺りの出身者は、スラングですぐにわかるよ(笑)。「Jawn」(Joint)、「Bul」(Boy)、「Wooder」(Water)とかね。
ーーどのようにしてビート制作を始めたのでしょうか? 音楽制作を教えてくれた人のなかで特に大切な人たちは誰ですか?
Jahlil Beats:初めてビートを何曲か作ったのは7歳の時だね。本格的に上達し始めたのは10〜11歳頃だった。きっかけは、いとこが教えてくれたPlayStationの「MTV Music Generator」というビデオゲームだ。ゲームとして売られていたけど、中身は実質的に音楽ソフトで、ビートを作ることができたんだ。僕たちはそれでビートを作って、カセットテープにダビングしていた。それが最初の一歩だね。その後、父がFruity Loops(FL Studio)を教えてくれたんだけど、あとはご存じの通りさ。ソフトの使い方はいとこが教えてくれた。それからは一度も振り返っていない。
ーープロデューサーとして、キャリアを築けると初めて思えたのはいつ頃ですか?
Jahlil Beats:2005年頃かな。Grafhというアーティストの曲で、初めてプレイスメント(楽曲採用)を獲得したんだ。彼は当時「Roc-A-Fella」に所属していて、最初はDame Dash Music Groupと契約していた。その曲はリリースされると、ニューヨークで出回っていたあらゆるミックステープに収録された。名前も勢いもあるアーティストとのチャンスをつかめたよ。それだけで、必要な自信はすべて手に入ったし、この先のビジョンも見えたんだ。
ーー最初の大きなブレイクはMeek Millとの仕事でした。その関係が年月とともにどう発展して、今はどうなっているのかを教えてください。
Jahlil Beats:Meek Millとは2007年にMySpaceでつながった。彼の新しいミックステープ『Flamers』が最高だってDMを送ったら、返信が来て「ビートを送ってくれ」と言われたんだ。送った3つのビートは、すべて彼の次のミックステープに収録された。そのうちの1曲が「Hottest in the City」で、僕自身がフックでラップしている。
彼はそのミックステープを『Flamers 2(Hottest In The City)』と名付けた。ところが、その後、2008年に彼は8カ月間収監されてしまった。その間も彼はしょっちゅう電話をくれて、出所する頃には具体的な計画がすっかりできあがっていた。僕は当時の彼のマネージャーだったCharlie Mackとも契約していた。だから今振り返ると、すべてが自然にかみ合っていたんだと思う。
出所後のMeekは自宅拘禁中だった。そこで僕は彼の叔母さんの家に通って、ビートを聴かせたり、彼や家族と一緒に過ごしたりしていた。その後、レコーディングの許可が下りてからは、毎日12時から20時までBatcave Studioにこもって、ひたすら曲を仕上げた。その時間が、僕たちをコラボレーターから兄弟へと変えたのは間違いない。2人で作った曲は100曲を超えるよ。今でも僕らの関係は深いし、直接の音楽制作ではなくても、いろいろな形で彼を支えているんだ。
ーー2014年、Princeは楽曲「U Know」をリリースしました。この曲には、あなたがMila Jの「Blinded」で手がけたビートがサンプリングされています。Princeにまつわる、すごいエピソードがありそうですね。
Jahlil Beats:ああ、あれは僕のキャリアの中でも特に報われた瞬間の一つだよ。実は、Princeのためにあの曲のリワークを手伝う機会ももらったんだ。史上最も偉大なアーティストのひとりが僕の音楽を使ってくれて、しかも僕の音楽のファンでいてくれた。それだけで、僕にとっては信じられないことなんだ。
ーーAnderson .Paakとともに「Bubblin」でグラミー賞を受賞しました。どのような経緯で実現したのでしょう? また、同業者たちからそのことを認められた時はどんな気持ちでしたか? また、受賞後に人生で一番大きく変わったことも教えて萌えますか?
Jahlil Beats:これも人生の中で現実とは思えない瞬間だった。「Bubblin」でのグラミー受賞は、僕にとって究極のお墨付きになった。DJ Jazzy Jeffが連絡をくれて、祝福してくれたことは一生忘れない。彼はフィリーのヒーローで、Will Smithとともに初めてラップ部門のグラミー賞を獲った人だからね。まさに自分のキャリアが最高に仕上がったって感じだよ。それまでにも数百万枚のレコードを売ってきたけど、グラミーを獲ったことで、自分がこの世界にいるべき人間だと証明できたんだ。そして今、僕も自分のアイドルたちや仲間の何人かと同じように歴史に名を刻んでいる。受賞してからは、電話が鳴りやまないよ(笑)。
ーーLil CherryとGOLDBUUDAの最新シングル「Yummy 88」についても少し教えてください。2人のことはどうやって知ったのですか? 楽曲についても聞かせてください。
Jahlil Beats:あの2人は稀有な才能だよ。あの曲は、まさにクラシックな「Jahlil Beats」サウンドだ。ヘヴィなエナジーに、大きなブラスとバウンス。このトラックでの2人のフロウは最高で、トラックを完璧に引き立てている。実は僕はLil Cherryが以前所属していたレーベルとも何年も仕事をしてきたんだ。そこから僕のビートが何曲か彼女に送られて、あの曲が生まれた。韓国のアーティストとは、もう長年一緒に仕事をしているよ。
ーー他に一緒に仕事をしたアジアのヒップホップ・アーティストはいますか? 今後プロデュースしてみたい、注目のアーティストは?
Jahlil Beats:Jay Park、Keith Ape、Dok2、Gonzoとは何曲も一緒に作った。Pdoggとは、新しい音楽に取り組むためのセッションを調整しているところだ。それから、ロサンゼルス出身のフィリピン系アメリカ人ラッパー、Carl Angeloとも仕事をしている。彼のバースはとにかく強くて、いくらでも出てくるんだ。Tiger JKともぜひやってみたい。でも本気で言うけど、Lil Cherryはスターだよ。彼女とはフル・プロジェクトを一緒に作りたい。「Yummy 88」は間違いなくヒット曲になるよ。
ーー2026年に音楽業界で成功を目指す若いプロデューサーたちに、アドバイスをお願いします。
Jahlil Beats:僕からの一番のアドバイスは、継続すること。継続。とにかく継続! 継続がチャンスを生むんだ。
ーー音楽以外にもさまざまな事業に取り組んでいますね。どのようにして関わるようになったのですか?
Jahlil Beats:地元とコミュニティへの愛が、不動産や教育といったさまざまな事業に進むきっかけを作ってくれたんだと思う。2018年には、地元チェスターにスニーカー・アパレルショップ「DTLR」初のシグネチャー・クロージング&アパレルストアをオープンさせたんだ。これはコミュニティに雇用を生み出したい、というシンプルなアイデアから始まったことさ。あと、2021年にはJahlil Beats Academyも立ち上げた。どちらも収益が発生する営利事業ではあるんだけど、それが目的だったわけじゃない。こうしたものすべてを僕にもたらしてくれたのは、いつだって音楽という贈り物なんだ。
ーーあなたが所属する「Roc Nation」は、ヒップホップを象徴するレーベルです。Jay-Zが新作アルバムを制作中という噂も耳にしましたが、何か知っていますか?
Jahlil Beats:Roc Nationにはもう15年所属しているよ。でも、Jay-Zが新作アルバムを作っているかどうかは全然知らないんだ。もし作っているなら、トップシークレットどころじゃない極秘プロジェクトだね(笑)。



