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Interview

GeG: Chill Popを越えて

『Mellow Mellow』 シリーズ最新作のコンセプトや制作プロセスから自身にとっての「Chill Pop」、タイ移住の経緯などについて、話を聞いた。

LiFTED | Jun Fukunaga | 27 5月 2026


変態紳士クラブのメンバーとしても知られる、音楽プロデューサー/トラックメーカーのGeGが、『Mellow Mellow GeG's Playlist Vol.3』を2026年4月22日にリリースした。 「Chill Pop」 という言葉がシーンに広まる起点となったVol.1から約6年。 VA/プレイリスト形式の本作には、クリス・ハート、kojikoji、VIGORMAN、CHOUJI、柊人ら世代もジャンルも越えた14名が参加した全11曲が収録されている。

今回、LIFTED JAPANはそんな最新作をリリースしたばかりのGeGにインタビュー。 アルバムのコンセプトや制作プロセスから自身にとっての「Chill Pop」、さらには現在拠点とするタイ・バンコクへの移住の経緯や現地シーンの動向などについても、話を聞いた。


――:『Mellow Mellow』 シリーズは2019年のVol.1スタートから本作で3作目となりますが、過去2作を経てVol.3を制作するうえで、GeGさんの中にあった「今だからこそ鳴らしたかった音」とはどんなものでしたか?

GeG: Vol.1の時って、探り探り作っているというか、人の音楽を聴いて「こんなのいいな」と思って作ったりとか、そういうことをやっていたんです。 でも今回はそういうことをせずに、自分の中で本当に作りたいものだけを作りました。 なので他の音楽をほとんど聴かない数ヶ月がありましたね。

――:他にトラックメイクや楽曲の構成を考えていくうえで、過去2作と比べて意識的に変えた部分や、逆に削ぎ落としたポイントがあれば教えてもらえますか?

GeG: そうですね。 昔は多めに音を足しながら作るスタイルだったんですけど、今回は無駄な装飾をつけたくなかったというか、余計なものをあまり入れたくないなと思って、自然体な感じに作ったところがありますね。

――:『Mellow Mellow』は「Chill Popという価値観をシーンに定着させる起点となった」と言われています。改めて、GeGさんご自身にとっての”Chill Pop”の定義や、最初のシリーズから約6年経った今、その言葉に対して感じている変化があれば教えてもらえますか?

GeG: 正直、最初は自分の音楽をChill Popとは思っていませんでした。 でも、SNSのコメント欄でめっちゃ書かれるので、それでちょっと意識するようになりました。 ただ、僕の中ではジャンルというよりは「感覚」のことなのかなと感じています。

Chill PopってヒップホップでもR&Bでもあると思うんですよ。 昔はローファイ・ヒップホップみたいなものがChill Popと言われてたのかな?と思うんですけど、そこがちょっと変わったのかなとは思っています。 日常の中に溶け込める音楽というか、人生を共にして、その時々に合わせて心を落ち着かせてくれる音楽。 そういうものがChill Popなのかなって思いますね。

――:今作はGeGさんを軸にした、VA/プレイリスト形式の作品になっています。全体の曲順や流れ、テンポ、雰囲気の起伏を設計していくうえで意識されたことがあれば教えてもらえますか?

GeG: 今作は前作からの自分の人生の続きみたいな感じなんです。 前作から2年弱ぐらいだと思うんですけど、その間に作った曲が入っているんですよ。 流れに関しては自分が聴いていて納得いく流れを意識しました。 けどアルバムとして一つの流れというよりは、プレイリストアルバムなので、まずは全員シングルを作るくらいのつもりで作って、あとは気持ちや情景が合うように流れと向き合っています。

雰囲気に関しては、ちょうど長いことお付き合いしていた方と別れてタイに移住したんですけど、最初は悲しい感じなのに、途中でタイに移住してなんかもうよくなってるというのが、聴いてもらえるとわかると思うんです(笑)。 それは意図的にやっている、自分の人生のストーリーみたいな感じなので、そこは結構意識しているかもしれないですね。

――:今作はクリス・ハートさんのような実力派シンガーから、現行シーンのアーティストまで、世代もジャンルも超えた幅広いアーティストが参加しています。そのなかで、特に「この人と今、この一曲を作りたかった」と強く感じた組み合わせと、その理由を教えていただけますか?

GeG: クリスさんとの曲(「Rusted Moon」)は、めちゃくちゃ思い入れが強いです。 作ろうと思ったキッカケが、「人生最後の失恋ソングにするぞ」と思ったことだったので(笑)。 それで最初はkojikojiとやる前提で作っていたんですけど、やっているうちに「これはひとりじゃ足りないな」と思いました。

実際、失恋といっても、悲しいという気持ちだけが失恋でもないじゃないですか。 そこを結構意識して、“儚いけど強く儚い”みたいな感じを出したかったんです。 ただ、kojikojiだけだと儚すぎる。 そう思った時に「クリス・ハートさんだったらヤバそうやな」というアイデアが急に浮かびました。 もちろん知り合いではなかったのですが、どうにか人に繋げてもらい、その気持ちを正直にご本人にお伝えしたんです。 そうしたら参加してもらえることになって。 おかげでkojikojiのちょっと儚い感じと、クリスさんのまっすぐな感じがうまく融合した曲になったと思っています。

――:もう一曲挙げるとすると、いかがですか?

GeG: うーん。ほんと全曲好きなんですよね。 けどCHOUJI君と柊人と作った曲(「Just The Way You Are」)は、僕がタイに住み始めてすぐぐらいの曲やったと思うのですが、タイだなー!って情景が浮かんでくるので好きですね。あと、2曲目に「Maybe Baby」という曲があるんですけど、それのVIGORMANのバースは、VIGORMANのバースの中でも史上一番かっこいいんじゃないかと思っています。

けど今回は、有名な方とやって再生されるだろうなとか、そういうことは考えないで作りました。 ただ、名前を聞いたことがないアーティストだったとしても、みんなが聴いてみる価値があると思えるアーティストとだけ作ったので、全曲聴いてみてほしいです!

――:これまでに、変態紳士クラブさん、にしなさん、唾奇さん、加藤ミリヤさん、yamaさん、ヒプノシスマイクといった幅広いアーティストの楽曲を手がけてこられました。そのなかで、プロデューサーとしてアーティストの良さを引き出すために、こだわっていることを教えていただけますか?

GeG: 僕は「この人は、この曲は、とかきっとこうやったら良さそう」という考えがわりとすぐ思い付くんです。 実際、いつもセッションする前にアーティストといろいろ話し合い、そこで僕の持ったイメージを相手に伝えています。 その結果、それがアーティストの良さを引き出すことにつながっていると思います。

――:GeGさんのようにヒップホップを軸にしながらも、幅広いジャンルを手がけるプロデューサーを目指す若手にアドバイスするとしたら、どんなことを伝えますか?

GeG: 「ヒップホップが軸」と言っても、単に周りがラッパーばかりというだけなんですよね(笑)。 そもそも僕は、J-POPも好きだし、テクノも好きだし、レゲエも好きだし、他にも好きな音楽はいっぱいあります。 それにどんなジャンルにもかっこいい音楽は存在していると思うんですよ。 一方でヒップホップも含め、ダサい音楽ももちろんあるし、そこが入り口になったら、リスナーはそのジャンルをダサいと感じてしまいます。 あとは色々やるにしても、そのジャンルのマナーなどは分かろうとしたほうがいいと思います。 それはプロデューサーは責任感が必要な仕事だからです。 音楽シーンってみんなで作っていますしね。

――:先ほど失恋をきっかけにタイに移住したという話がありましたが、改めてそれまでの拠点だった大阪からタイに移住を決めた理由を教えてもらえますか?

GeG: 失恋して...... というよりは、移住を決めて別れた、みたいな感じです。 僕は今でも「自分の人生は常に変えていきたい」と思っているんですけど、タイ移住もそれでしたね。 それが一昨年の12月なんですけど、初めてタイに行ったのは、その2ヶ月前ぐらいなんですよ。 その時に次は「ここやな」と直感的に思いました(笑)

――:移住後、ご自身の生活がどんなふうに変わったかも教えてもらえますか?

GeG: あんまりイライラしなくなりました。 舌打ちとかあまり聞こえてこない国なんですよ。 もちろんみんなムカついてると思うんですけど、我慢してでも、みんなほんとによく笑ってる。 けど、だからこそ俺もここに居ると楽しく生きられるし、ずっと集中できるんです。 そこが一番大きいですね。

ただ、日本に自分の会社があるのですが、そこのみんなが支えてくれているからこそ成り立っていますね。 日本のスタジオはJIN DOGGなどのアーティストが維持してくれていたりしますし、自分がこうやって自由に動けているのは仲間たちのおかげですね。

――:タイの音楽シーンに触れて、面白いと感じたアーティストはいますか?

GeG: タイのヒップホップは割と現行な感じなんですけど、一方で、タイのPOPって日本の平成の音楽みたいな感じがあるというか。 韓国からの影響もあるとは思うのですが、例えば、ちょっとキラキラした感じというか、タイの音楽ってコードチェンジもしっかりしているんですよね。 今回のアルバムはタイポップに少なからず影響されていると思います。

――:現地のアーティストとも交流はあるんですか?

GeG: あります。 タイにヒップホップを持ってきたレジェンドみたいな先輩で、Thaitaniumというグループがいるんですけど、そのリーダーのKhanなどには移住した時からお世話になっています。 そして、やっぱりタイでも知り合いにはラッパーが多いですね!

あと今回アルバムに収録しているTAYOというアーティストはタイ人で、日本とアメリカに留学経験もある子で3ヶ国語を使って音楽してますね。

――:タイから見ていて、日本のシーンとの違いみたいなところは、どういうところが一番大きいと思いますか?

GeG: タイは音楽好きが多い国なのかな。 レストランやバーなどではほとんどのお店がバンドを雇ってたりしていて、そこで有名なタイの曲リクエストとかしてみんなで大合唱したりします。 だからこそミュージシャン人口も多いし、スキルも高いですね。

でも、日本って今のところは自国だけで完結できちゃう国ですけど、今後は必ず東南アジアや、さらには世界を相手にしないといけない。 ずっと音楽を続けてやるためにも、色々考えていかないと駄目な時代が来るのかなと思ってます。

――:これから挑戦したいことを教えていただけますか?

GeG: 「Mellow Mellow」 シリーズに関しては、今回で一旦区切りをつけています。 最後にベストアルバムみたいなものは出したいと思ってはいるのですが。 さっきも言ったように僕の音楽って「Chill Pop」とか「メロウ」と言われるんですけど、最近はそういうものだけではなく、踊らせる音楽だったり、海外の方との曲だったり、色んなものを作りたいと思っていて。 それこそDJをやってみたり、今後はそういうこともやってみようかなと思っています。

あとはやっぱり変態紳士クラブが5年くらい正式に活動していなかったので、実はもう復活も近いので、今はそれが一番楽しみな挑戦ですね!みんなに待ってもらえているのか分からないのですが、今作っている新曲は自信あります!

――:最後に海外を拠点にしているからこその今後の展望を教えていただけますか?

GeG: 「日本の音楽を広めたい」とか、そういう大それたことは思わないですけど、自分らの音楽をまずはアジアでもちゃんと広めたいです。 実際、日本の音楽はこっちでは本当に藤井風と千葉雄喜ぐらいしか聴かれていないし、僕らの音楽もまだこっちではほとんど広まっていません。 だけど今後広がっていく可能性はあるし、本当に開拓しがいがあるし、しっかりやっていきたいです。

あとは特に有名なアーティストとやりたいというよりは、チームとしてグローバルに、長く一緒に動いていけるアーティストやチームを見つけることが目標ですね。 アジアだけではなく、もっと違うエリアにも行ってみて、その場所で感じたことを音にしながら、これからも作り続けていきたいです。

【リリース情報】

アーティスト:VA

タイトル:-GeGʼs Mellow Mellow ~GeGʼs Playlist Album vol.3~

LABEL:GOOSEBUMPS MUSIC / Art Work:TAKERU SHIBUYA

発売⽇:2026年4⽉22⽇リリース / 曲数 : 11曲

-視聴URL-

https://untitled.stream/library/project/8SbZ5eEql3XeS6LDDdAhn