自分の意思で幕を引く。これほど潔いことはない。2021年2月22日、フランスのエレクトロニックミュージック・デュオDaft Punkは、8分間の映像作品『Epilogue』で解散を発表した。映像の中で、2人のロボットは実にロボットらしく自爆を遂げる。約30年にわたり音楽シーンに多大な影響を与え、数々のツアーを成功させてきた彼ららしい最期だ。ラストには『Touch Me』の児童合唱が響き、「Touch me/Love is the answer/You're home」という言葉で幕を閉じる。
すべてが劇的で、謎めいていた。もしかすると音楽界史上最高のいたずらなのかもしれない。あるいは、Thomas BangalterとGuy-Manuel de Homem-Christoが30年の時を経て、別々の道を歩むことにしたのかもしれない。真相はおそらく永遠にわからないだろう。そして「多くを語らない」こと自体が、Daft Punkの天才たる所以なのだ。
Daft Punk以前、ヒップホップは電子音楽など眼中になかった。Beastie Boysが「Say heck no to techno(テクノにノーと言え)」というステッカーを作ったのは有名な話で、大半のヒップホップアーティストにとって、電子音楽はテンポが速すぎて肌に合わなかった。しかしDaft Punkは、その常識を覆したのだ。
1. サンプリング
ネット上にはわずかながら批判の声もある(何事にも批判はつきものだ)。「他人の曲を持ってきて自分の曲として出してるだけじゃん」といった類のものだ。だが、サンプリングはヒップホップの命であり、Daft Punkにとっても同様だった。彼らの楽曲が今なお新鮮でスムーズに響くのは、サンプリングの技術があってこそだ。ヒップホップは、その点で彼らに脱帽するしかない。
The way daft punk flipped the sample for one more time is still so crazy to me pic.twitter.com/WIbKWKa1CD
— Neh (@NehhLmao) February 22, 2021
2. DA FUNK
Daft Punkの音楽は、弾むようなグルーヴと抗いがたいファンクネスに満ちている。型破りでありながら、ビートはしっかり刻まれている。BPMは速すぎず、70年代のシットコムのテーマ曲を思わせながら、未来から届いたサウンドでもあった。ヒップホップはファンクを愛している。Daft Punkも同じだった。
3. アニメ
ヒップホップは昔から日本とアニメが大好きだ。今やLil Uzi Vertは、アニメキャラへの転生をほぼ完了しつつあるほどである。2003年にDaft Punkが映画『インターステラ5555:THE 5TORY OF THE 5ECRET 5TAR 5YSTEM』を発表したとき、ヒップホップ界は色めき立った。アルバム全編をアニメ映像化したこの作品は、今観ても最高に楽しい。
4. J Dillaをサンプリングで訴えなかったこと
J DillaはDaft Punkに匹敵する伝説的存在だが、かつて両者の道が交わったことがある。J DillaはThomas Bangalterの楽曲「Extra Dry」をサンプリングし、Slum Villageの名曲「Raise it Up」を生み出した。Daft Punk側はこの曲を聴いて気に入ったが、サンプルの許諾を取っていないことにも気づいていた。しかし彼らは弁護士を送りつけて使用停止を求めるようなことはせず、J Dillaを直接呼び出した。意気投合した両者は、サンプル使用の「お返し」としてリミックス制作をDillaに依頼。結局Dillaは時間が取れず、盟友Karriem Rigginsが代わりに手がけたが、Daft Punkはその仕上がりを大いに気に入った。サンプリングで訴訟を起こす代わりに、みんなで手を組む。そんな世界のほうが素敵じゃないだろうか?
5. BUSTA BUSS
Busta Rhymesは2005年のアルバム『The Big Bang』からの先行シングル『Touch It』で、限界を突破してみせた。Swizz Beatzがプロデュースし、『Technologic』をサンプリングしたこの曲は、クラブで暴れたい連中のアンセムとなった。
6. KANYE
凄腕DJ兼プロデューサーのA-Trakは、2000年代を通じてKanye WestのツアーDJを務めていた。ニューヨークのMeadows FestivalでKanye WestをDaft Punkに引き合わせたのは彼だ。Kanye Westはすぐさま『Harder, Better, Faster, Stronger』をサンプリングしたいと言い出したが、A-Trakとしては、ほんの数年前に世界的ヒットを飛ばした曲だけに、安っぽく使われるのは避けたかった。テンポを落とした未来派ヒップホップ曲「Stronger」は見事に全米1位を獲得。さらにグラミー賞の最優秀ソロ・ラップ・ソングに輝き、プラチナ×7認定を達成したのだ。のちにA-TrakはBillboardのインタビューで「当時はジャンルの壁がもっと厚かった。Kanyeの好奇心は本当に評価されるべきだ。いいものを見抜く嗅覚こそ、彼の最大の武器だよ」と語っている。
「当時はジャンルの壁がもっと厚かった。Kanyeの好奇心は本当に評価されるべきだ。いいものを見抜く嗅覚こそ、彼の最大の武器だよ」 - A-Trak
7. PHARRELL
「Get Lucky」が史上屈指の名曲であることに異論はないだろう。Nile Rodgersのリフと、少ない言葉で多くを伝える歌詞がその理由だ。しかしPharrellとロボットたちの交流は、それ以前から続いていた。『Random Access Memories』の数年前、N.E.R.D.のアルバムに収録された「Hypnotize U」は、「Get Lucky」とKelisの「Milkshake (Remix)」が密通した結果、生まれたような曲だ。
8. THE WEEKND
現代の音楽シーンで、The Weekndほどコラボを重ねるアーティストはいない。誰とでも組む彼が、Daft Punkと手を組まないわけがなかった。パリでのわずか4日間で、彼らは「Starboy」と「I Feel It Coming」を完成させた。「Starboy」は双方にとって初のBillboard1位、「I Feel It Coming」はBillboard2位を記録。どちらの曲も色褪せることなく、The Weekndは2021年のNFLスーパーボウルのハーフタイムショーを「Starboy」から開始させている。





