UKラップシーンの頂点に立つCentral Ceeが、今月アメリカで2週にわたり開催されるコーチェラ2026に出演。日本時間4月11日(土)に行われるWeek 1の初日日程では、午前9:30からMojaveステージに登場する予定だ。
この記念すべき公演に向け、本稿ではCentral Ceeのキャリアを振り返りながら、ヒップホップファンが押さえておくべき人気曲を紹介する。
UKラップシーンの頂点に上り詰めるまで
ロンドン・シェパーズブッシュ出身のCentral Ceeは、UKドリルとメロディックなラップを融合させた独自のスタイルで、2020年代のUKラップの人気をグローバルにまで押し上げたシーンを代表するラッパーだ。
キャリアの転機は2020年。それまでオートチューンを多用していたスタイルを捨て、ドリルに舵を切った「Day in the Life」で注目を集めた。同年リリースの「Loading」はUKシングルチャートのトップ20に食い込み、その名前が広く知られるきっかけとなった。また、2021年にはミックステープ『Wild West』が全英2位を記録し、続く2022年の『23』では全英1位に到達。この年、UKラッパーとして初めて年間Spotifyストリーミング10億回を突破した。
さらに2023年にDaveとの「Sprinter」で全英10週連続1位というUKラップ史上最長記録を打ち立てると、2024年にはLil Babyを迎えた「Band4Band」がBillboard Hot 100で18位を記録。UKラップシングルとして同チャート史上最高位を更新した。そして2025年1月にリリースされたデビューアルバム『Can't Rush Greatness』は、全英1位に加えBillboard 200で9位を獲得。UKラップのアルバムとして初めて米トップ10に入るという歴史的な成果を残した。世界累計ストリーミング数は60億回を超える。
Central Ceeと日本の接点
今年3月、Central Ceeはファン待望の初単独来日公演を実施した。しかし、彼が日本と接点を持つのはこの時が初めてではない。例えば、2024年11月には、グラフィックアーティストVERDYと自身のブランド「SYNA WORLD」のコラボレーションアイテムを南青山のOTSUMO PLAZAで限定発売し、大きな話題を呼んだ。さらに、2025年10月には、YZERRが主催する「FORCE Festival」に出演し、ヘッドライナーの一角として日本のオーディエンスを圧倒した。
また、日本におけるUKラップの受容の歴史はまだ浅いが、Central Ceeをきっかけにそのサウンドに触れたヒップホップファンは少なくないだろう。さらにその影響は、日本のラッパーたちの楽曲からもうかがえる。たとえば、Watson、Bonbero、LANA、MFSによる「Makuhari」は、ドリルビートの上でハードさよりもキャッチーなフロウとメロディを前に出したマイクリレーが印象的な一曲だ。同曲のドリル特有の硬質なビートを保ちつつも、メロディやキャッチーさで間口を広げるポップなアプローチは、Central Ceeのヒット曲とも重なる部分がある。さらに、 Bonbero & Tade Dustの「Back and Forth」も、UKドリル特有の疾走感あるビートを高度なラップスキルで乗りこなしており、Central Ceeに通じるものがある。
UKラップ史にその名を刻むCentral Cee楽曲5選
1. Loading(2020年)
Central Ceeの現在のスタイルの原点と言える一曲だ。UKドリルを基盤にしながらも、ダークさよりも明るさを前に出したプロダクションが特徴で、「ハッピーなドリルビート」とも評された。当時のUKドリルといえば、重く硬質なビートにストリートのリアリティを乗せるのが主流だったが、Central Ceeはそこにメロディとキャッチーさを持ち込んでいる。ハードなシーンの空気を壊すことなく、より広い聴衆に届く道を切り拓いた楽曲だ。
2. Obsessed With You(2021年)
イギリスのシンガーソングライターPinkPantheressが、プロデューサーMura Masaと制作した「Just for Me」をサンプリングした楽曲で、全英4位を記録した。早回ししたPinkPantheressのシルキーなボーカルをプリコーラスに取り入れつつ、ロンドンのストリートを生きる男の視点から綴ったラブソングに重ねている。UKドリルとインディポップという一見かけ離れた二つのサウンドが、サンプリングを介して自然につながっているのが面白い。
3. Doja(2022年)
EveがGwen Stefaniを迎えた2001年のヒット曲「Let Me Blow Ya Mind」を大胆にサンプリングした一曲で、全英2位を記録したヒット曲。そのキャッチーなフックをドリルビートの上に再構築した仕上がりは、短尺動画と相性がよく、TikTokで爆発的に広がった。また、アメリカの人気音楽メディア「Lyrical Lemonade」を主宰するCole BennettがMVを手がけている。
4. Sprinter (2023年)
サウスロンドン出身のラッパーDaveとの共作で、ラテンの香りを帯びたアコースティックギターが印象的なサマーアンセム。Central Ceeの軽やかなフロウと、Daveの重厚なリリシズムという異なる持ち味が一曲の中で共存し、互いの個性を引き立てている。全英チャートでは10週連続1位を記録し、Miley Cyrusの「Flowers」と並ぶ2023年の最長No.1シングル記録を樹立。これhはUKラップ史上最長の記録でもある。その影響力はジャンルの枠を超え広がり、Obama元大統領が選ぶ年間プレイリストにも名を連ねた。
5. Iceman Freestyle(2026年)
今年3月に発売されたEP『ALL ROADS LEAD HOME』からの先行トラック。2025年7月にDrakeが行った「ICEMAN」のライブ配信の中で初披露され、正式リリース前から大きな話題を集めていたことでも知られる。ストリングスを配した重厚なプロダクションの上で、自身の台頭を語るフロウが響く一曲。またMVは、英国の人気ドラマ『ピーキー・ブラインダーズ』を彷彿とさせるシネマティックな映像に仕上がっており、ロンドンの会員制クラブ「The Mildmay Club」での撮影シーンも印象的だ。
*本記事は2026/04/08に加筆・修正を加えたものです。



