ほとんどのアーティストにとって、音楽はゴールだ。しかしLil CherryとGOLDBUUDAにとって、それはクリエイティブな宇宙のひとつの通過点に過ぎない。
この韓国人兄妹デュオは、常に自分たちだけのレーンで活動してきた。サザン・ヒップホップ、K-POP、ファッション、ビジュアルアート、インターネット・カルチャー、そしてそのときたまたま興味を引いた奇妙なアイデアなど、あらゆるところからインスピレーションを得てきた。韓国とマイアミの間で育った2人はどちらの場所にも完全に根を下ろした感覚を持てなかったが、そのアウトサイダー的な視点こそが彼らの最大の強みのひとつとなっている。多くのアーティストがジャンルやシーンにきれいに収まろうとしてキャリアを費やすなか、Lil CherryとGOLDBUUDAはそれとは真逆のことをしてきた。
彼らの音楽は騒々しく、カラフルで、混沌としていて、かつ、遊び心にあふれ、一言で言い表すことは不可能だ。重低音の効いたクラブ向けの曲を作るときも、未来的なビジュアルで実験するときも、新たなクリエイティブ事業を立ち上げるときも、彼らは常に同じ哲学でプロジェクトに取り組む。想像力は慣習に縛られてはならない。
このLiFTEDの独占インタビューでは、Lil CherryとGOLDBUUDAが、ヒップホップと文化的二重性によって形作られた家庭での成長、兄妹であることから生まれるクリエイティブな化学反応、AIが急速に進化する世界での音楽の未来、そして将来のアーティストは単なるミュージシャンではなく世界の構築者にならなければならないと信じる理由を語ってくれた。また、アメリカにおけるアジア系ラッパーのOG、MC Jinが代表を務める新レーベル「Family Style Records」への加入、最新曲「DRESS2KILL」Pt. IとPt. IIの進化、そしてアジアの次世代アーティストたちが既存のテンプレートを拒む背中を押す青写真を作るという野心的なビジョンについても話を聞いた。
ーー幼少期の家庭環境について少し教えていただけますか?音楽が身近な家庭でしたか?たくさん音楽が流れていましたか?もしそうなら、どんな音楽でしたか?
BUUDA:一般的な意味では、そうでもなかったね。実際、家族で楽器を持ち寄って演奏するような音楽一家ではなかったよ。でも音楽は常にそこにあった。韓国のバラード、昔のポップス、教会音楽、アメリカのラジオ。車やテレビでたまたま流れていたものを何でも聴いていた。僕たちを形作ったのは、環境そのものだったと思う。家族はたくさんの変化と移行を経験してきて、音楽はすべてを包み込める感情の言語になった。ノスタルジア、孤独感、興奮、野心。アメリカと韓国の両方で育ったことで、奇妙な文化的ミックスも生まれた。完全にひとつの場所に属している感覚を持てなかったから、自然に音楽は異なる世界のハイブリッドになっていったかな。
Cherry:BUUDAの言う通り、一般的な意味ではそうでもなかったけど、母親は若い頃ピアノの先生をしていて、音楽作曲を専攻していたよ。だから音楽と音楽性は確かに私たちの血の中にあると思う。父親もずっと歌が好きだった。子供の頃、家にはパソコンが1台しかなかったから、BUUDAがダウンロードした音楽が私が聴く音楽でもあった。それが今日の私たちの音楽の趣味を形成している。ヒップホップで言えば、50 Cent、Juvenile、Lil Wayne、Chingy、Gucci Mane、Nelly、Flo Rida、Pretty Rickyなどをよく聴いていたね。
ーーLil Cherryさんは音楽制作を始める前、詩を書いていましたね。今でも詩を書いていますか?それとも今はほとんどのエネルギーを歌詞にしていますか?
Lil Cherry:詩と音楽は、私にとって別々のアート形式であったことは一度もない。共存し、お互いに栄養を与え合うから、どちらにも同じだけの時間と注意を注いでいるよ。実は、私の曲のほとんどは詩として始まるんだ。たいてい最初に言葉、イメージ、メタファーから始めて、それが自然にリズム、メロディ、そして曲へと進化していくんだよね。
ーー2023年5月にLiFTEDの表紙を飾りましたが、今回で2度目のカバーストーリーに登場となります。この3年間で起きた一番衝撃的な出来事は何ですか?
Lil Cherry:こうして皆さんのところに戻ってこられて嬉しいよ。ハッピー2026。これまで以上に旅をしていて、どの冒険も本当にぶっ飛んだものばかりだった。新しいコレクティブ「OVARY」をスタートさせて、最初のアーティストGinjaのデビュープロジェクトを立ち上げたよ。それにRowana Francheskaという最高にかわいい子犬を迎え入れたんだ。その子は今7カ月で、私の人生を完全に変えてしまった。あとはDJを始めたんだけど、最初のギグでbrutalismus3000(ベルリン拠点のハードテクノ・デュオ)のオープニングアクトを務めたよ。それと南アフリカのケープタウンへ行って、HeinekenとUggのグローバルアンバサダーになって、パーソナルトレーニングを始めて、セラピストに通い始めた。それにベイプをやめたかな。クレイジーだよ(笑)。
ーーGOLDBUUDAさんは本当に音でギリギリまで可能性を押し広げています。あれほど先鋭的な音楽性に振り切って、それをまとめるインスピレーションはどこから来るんですか?
GOLDBUUDA:常に公式より可能性の方に興味があったんだ。何かを聴いたとき、すぐにそれがどこに属するかわかってしまったら、大抵あまり興奮しない。さまざまな環境で『よそ者』だったことが、実験的な試みをするきっかけになったんだと思う。マイアミでは韓国人の子供で、韓国ではマイアミの子供だった。僕は決して一つのカテゴリーにすっきりと収まるような存在ではなかった。だから音楽においても、ジャンルの境界線を壁とは捉えていない。むしろ、それらは素材のようなものだと考えているんだ。だから、みんなに僕らの音楽を聴いて「こういう組み合わせが成立するとは知らなかった」と思ってほしい。そこから初めてアートが生きてくると感じるんだ。
ーー2026年後半以降、ヒップホップと音楽全般はどんな方向に向かっていくと思いますか?
GOLDBUUDA:今はジャンルの終焉、つまりポスト・ジャンルの時代に入りつつあると思う。人々はレッテルにはあまりこだわらなくなっている。気にするのは世界観とアイデンティティだ。それにAIもすべてを加速させている。技術的なハードルが消えているということは、アイデアとセンスが単なる実行力よりも価値を持つようになりつつある。今や誰でもビートが作れるようになったよね。でも、本当に重要なのは、何を伝えようとしているのか、そしてなぜ人々がそれを気にかけるべきなのか、ということだ。次世代のアーティストは、ミュージシャンであり、クリエイティブディレクターであり、そして世界観を構築する人でもあると思うんだ。自分のアートを中心に独自の宇宙を創造できるアーティストこそが、際立つ存在となるはずさ。
ーーデュオとしての音源リリースは数年休んでいた一方で、個々のリリースは続けていましたよね。家族がメンバーになっている音楽グループはたくさんありますが、兄妹で音楽を作ることがこれほど世間に響く理由について、どう考えていますか?
Lil Cherry & GOLDBUUDA:作り上げることのできない信頼と誠実さのレベルがある。お互いの人生を通じて知っているから、相手を感動させる必要がないんだ。残酷なまでにお互いに挑戦し合いながら、それでも相手がどこから来ているのかを理解できる。オーディエンスもそのケミストリーを感じ取れると思うよ。リハーサルした何かではなく、共有してきた歴史、記憶、共通のリファレンス。時には、アイデアを説明し合う必要さえない。ただ理解できるんだ。
ーーMC Jinの新レーベル、Family Style Records(Pacific Music Group傘下。NE-YO、Sonu Nigam、MC Jin、Jonathan Serbinが2025年に設立したアジア発のグローバルミュージックカンパニー)と契約したばかりですね。アメリカで育った部分もあるお二人はMC Jinが成し遂げた偉業はご存知でしたか? また、契約の経緯についても教えてください。
Lil Cherry & GOLDBUUDA:当然知っているよ。アジア系の子供がヒップホップが周りにある環境で育ったなら、MC Jinは音楽以上の何かを体現する存在だった。当時、彼は不可能に見えた壁を突き破った。アジア系アーティストが、自分たちの存在を期待されていなかった場所に踏み込めるということを示してくれたんだ。
Family Style Recordsとの契約はとても自然な流れだったよ。最初にお互いのリスペクトがあったし、僕たちが既存のレーンに収まろうとしているのではなく、新しい何かを作ろうとしていることを理解してくれた。そんな感じでビジョンが自然と一致したよ。
ーー最新リリース「DRESS2KILL」は、創造性に満ちたオーディオとビジュアルの饗宴という印象です。曲とMVがどのように作られたか教えてもらえますか?
Lil Cherry & GOLDBUUDA:「DRESS2KILL」は、曲になる前にひとつのアティチュードとして始まり、そのキーワードがすぐに曲のタイトルになったよ。それとプロダクションは豪華かつ、アグレッシブで遊び心がある未来的なものにしたかったんだ。ビジュアル的には、従来のMVではなくアートインスタレーションに近い感覚で制作に取り組んだよ。だから、すべてのフレームが動くデザインの作品のように感じさせる必要があった。そして、プロジェクト全体を「もし想像力がジャンルのルールを完全に無視したら、何が起きると思う?」という、ひとつの問いを中心に構築していったんだ。
ーー最近「DRESS2KILL」Pt.IIという新しいコレオグラフィービデオをリリースしたばかりですね。K-POPグループを見ているときに見慣れているものに近くて、かなり興味深いです。この背景にある映像の設計思想を教えてもらえますか?
Cherry:そう、BUUDAが踊っているんだよね(笑)。私たちが韓国にダンスとパーティーミュージックを持ち込んできたことはみんな知っているけど、デュオとして初めて最初から最後まで一緒にフルコレオグラフィーを作り上げたんだ。映像のタイムコード0:00から3:27まで、その動きがダイナミックなストーリーを語り、曲に別のレイヤーを加えている。
この2つ目のMVは、言ってみれば、マンゴースティッキーライスの上にココナッツクリームをかける瞬間だよ。曲はすでにそこにあったけど、コレオグラフィーが体験を完成させて、すべてをより豊かにするというイメージ。
あと、踊るのは楽しみたいからで、楽しさを取り戻したいから。そして、私たちの音楽を聴くことにまったく新しい次元を加えることができると知っていたから。練習するのはそのBPMのせいもあって体力的にきつくて、かなり謙虚な気持ちにさせられたけど、チームとの練習は毎回とても楽しかった。私たちのコレオグラファーであり、チームの一員でもあるSophiehen & Neon Nayeonにすごく感謝しているということをここで伝えたい。
BUUDA:K-POPに伝統的に関連付けられているものを取り上げ、文脈を再構築するというアイデアが好きだった。曲には自然に動きに変換されるエネルギーがあるんだ。そして「DRESS2KILL」の周りの世界に別のレイヤーを見せたかったというのもある。時として、MVが終わっても曲は終わらない。異なるフォーマットが同じ宇宙の異なる側面を明らかにするだ。
ーー最初のMVにはAIが多用されていますが、AIの雑なところを使うのではなく、その可能性の芸術的な限界を本当に押し広げているように思いました。AIアートに対する意見、そしてAIの未来についての予測を教えてください。
Lil Cherry & GOLDBUUDA:AIが本質的に良いとも悪いとも思わない。あくまでツールだと思っているんだ。問題はAIではなく、使う側の怠惰さだよ。すでに人気のあるものを模倣するためにAIを使えば、魂のないコンテンツが生まれる。でも、クリエイティブなコラボレーターとして使えば、そうでなければ不可能かもしれないものを想像する助けになる。アートの未来はより二極化すると思う。AIによって生成される使い捨てコンテンツが無限に生まれる一方で、本当にオリジナルなアイデアはより価値が高く希少なものになるはずだ。だから、人間のセンス、好奇心、視点がこれまで以上に重要になると思うよ。
ーー2026年後半、そしてその先に向けた大きな展望を教えてください。
BUUDA:今、曲だけでなく、もっとたくさんのものを作っているよ。音楽、ビジュアル、パフォーマンス、ファッション、コミュニティを通じて世界を創造しているんだ。僕らという存在が、アジアのアーティストにとって、グローバルなインパクトを与えるために既存のテンプレートに従う必要がないことの証明になってほしい。目標は単にビッグアーティストになることではないんだ。自分たち以前には存在しなかったレガシーを作り、他のアーティストたちが臆することなく自分らしくいられるよう、インスピレーションを与える青写真を残すことなんだ。
Cherry:もっと音楽、もっと映像、もっとバイブス、もっとOVARY、もっと1UP、もっとSauce Cartel、もっとFamily Style、もっとPMG、もっとショーとツアー、もっとファッション、もっと実験、もっとポジティビティ、もっと楽しみ、もっと愛、もっと詩、もっと人生、もっともっともっともっともっと。



