ヒップホップ生誕から50年が経ったが、この間女性ラッパーたちは不遇な扱いを受け続けてきた。しかし、現在、業界だけでなく、リリックにも蔓延していたミソジニーが、ようやく薄れつつある。Ice Spice、Glorilla、Flo Milli、Little Simz、SexyyRedといった新世代の女性ラッパーたちが、マノロ ブラニクのスティレットヒール(ピンヒール)を履きながら、シーンを席巻しているからだ。
現代日本ヒップホップシーンにおいて、"クイーン"を目指す沖縄出身のラッパー、Awich。「Asian Wish Child」を意味するステージネームを持つ彼女は、誰もが息を呑む圧倒的なライブパフォーマンスと新作アルバム『The Union』を武器に、着実にその道を歩んでいる。
今回、2023年10月10月度のカバーを飾った彼女がLiFTEDのインタビューに応じ、人生の苦難、ライブへの想い、そして残したいレガシーについて語ってくれた。

今年はヒップホップ誕生50周年ですね。ヒップホップとの出会いはいつ頃でしたか?ハマったきっかけや、最初に歌詞を全部覚えた曲についても教えてください。
ヒップホップにハマったのは14歳の時、2Pacを聴いたのがきっかけですね。2Pacって、クリエイティブなやり方で世界をより良くしようとしていたじゃないですか。そこに惹かれて。最初に歌詞を全部覚えたのは「Ambitionz Az a Ridah」でした。
ステージネームのAwichは「Asian Wish Child」の略だそうですが、もう少し詳しく教えていただけますか?
「Asian Wish Child」は私の本名「亜希子」の直訳なんです。「アジアが望んだ子供」という意味を込めて、両親がつけてくれました。
旦那さんを亡くされるという辛い出来事がありました。その経験から、人生の困難についてどんなことを学びましたか?
人生は当たり前に与えられるものじゃないから、感謝すること。それに尽きますね。
いくつかのインタビューで悲しみと向き合う中で一度音楽をやめたとおっしゃっていましたが、何がきっかけでまた立ち上がれたのでしょうか?
日記を書き続けたことと、「沖縄の人間はほとんどみんな愛する人を失ってきた。それでも俺たちは生きてきた。だからお前もできる」という父の言葉ですね。
日本のヒップホップシーンのクイーンでありながら、シングルマザーでもあるわけですが、どうやってバランスを取っていますか?
同じ夢を共有してくれて、かつ、私たちの活動が世界にどんな影響を与えられるか、その大きなビジョンを一緒に見てくれるチームがいるからですね。彼らがいなかったら何もできない。一人じゃ絶対無理です。
あなたの曲のうち、娘さんのお気に入り曲はどの曲ですか? その理由を教えてもらいたいです。また、娘さんがラップする時にどんなアドバイスをしていますか?
「洗脳」ですね。皮肉が大好きなんですよ(笑)。だから世界を皮肉っぽい視点で見た曲は全部好きみたいで。アドバイスは、「自分らしくあれ、それを堂々と貫け」って伝えてます。
現代ヒップホップにおける女性ラッパーの台頭についてはどう感じていますか?
もちろん最高ですよ。この変革の時代に立ち会えているのは本当に嬉しい。もっと歳を取った時に振り返ったら、きっとすごい思い出になると思います。
Rolling Loudでのライブを拝見しましたが、本当にエネルギーが凄まじかったです。言葉が通じない観客を前にした時はなおさらだと思いますが、ラッパーにとって、ステージで観客を沸かせることはどれくらい重要ですか?
私にとってはすごく大事ですね。単純にライブが大好きだから。リアルの場で人と繋がる感覚って、何よりも興奮するんですよ。脳のすごく大切な部分が刺激される感じがします。
アジアのアーティストとたくさんコラボされていますが、まだ共演していなくて、今後一緒に曲を作りたいラッパーはいますか?
たくさんいすぎて挙げきれないです!
ヒップホップシーンにどんなレガシーを残したいですか?
自分を知ること。世界とコミュニケーションすること。そしてお互いを理解することですね。
アルバム『The Union』について、制作のプロセスとこのアルバムがご自身にとってどんな意味を持つか教えてください。
オーディエンスが増えて、チームも大きくなったことで責任も増えました。だから『The Union』の制作プロセスは、以前とはだいぶ変わりましたね。より綿密に計画を立てて、いろんなことが複雑に絡み合っているんです。自分の直感だけじゃ乗り越えられないって感じる瞬間もありました。
でも変わらないこともあります。まず、世界はもっと良くなるっていう自分のビジョンは本物だって信じること。そして、自分にはそれを実現する力があるって思うこと。規模が大きくなって複雑になればなるほど、自分の成長を実感できる。それがすごく楽しいんですよね。





