韓国のラップシーンにおいて、今月のカバーを飾るFLOWSIKほど、長期間にわたり、卓越したフロウを聴かせ続けてきたラッパーはそういない。今やOGと呼ぶにふさわしい存在だが、過去の人だと思ったら大間違いだ。2011年にヒップホップトリオ「Aziatix」(2011年にMnet Asian Music Awards「Best New Asian Artist」受賞」)の一員としてデビューして以降、FLOWSIKの名はシーンで常に存在感を放ってきた。ニューオーリンズの名門Cash Money Recordsと大型契約を結ぶも、楽曲リリースは保留にされ続け、グループは2014年にレーベルを離脱。翌2015年にソロキャリアをスタートさせて以来、立ち止まることなく走り続けている。2016年には韓国のヒップホップサバイバル番組『Show Me the Money 5』(SMTM)でセミファイナリストに進出し、シーンの重鎮たちとも数多くコラボを重ねてきた。そして最近の『SMTM12』では、まだまだ彼の実力が健在であることを証明してみせた。
FLOWSIKは2021年のLiFTED創刊当初から我々が注目してきたアーティストだ。アジアのヒップホップシーンのテイストメーカーとじっくり話ができるのは、純粋に嬉しい。MC JIN、JOE FLIZZOW、DABOYWAY、MC YANなど、これまでもアジアのヒップホップを切り拓いてきたOGたちをカバーに迎えてきたが、今回も過去のカバー企画と同様にインタビューを通じて、アジアのヒップホップシーンのパイオニアたちへの敬意を示したい。それでは始めよう。
ーー3月のカバーに登場いただきありがとうございます。最近はいかがですか?
LiFTED!こちらこそ呼んでくれてありがとう。光栄だよ。
――Aziatixをご存じない読者のためにお聞きしたいのですが、韓国系アメリカ人のアーティスト3人がソウルで結成したグループだったんですよね? どのような経緯で結成に至ったのですか?
そう、ソウルで出会った3人組だった。Aziatixの結成は本当に自然な流れだったよ。無理に作ったものじゃない。当時は全員がソロで活動していて、それぞれ個性的な声質をもっていたんだ。「一緒に1曲やってみて、どうなるか見てみない?」って話になって。実際にやってみたら形になったから、MVも撮ってリリースした。そこから自然とバズが広がって...というのがAziatixの始まりだった。
――音楽活動のために韓国に戻られたのですか?
韓国に戻った理由はいくつかある。音楽活動のためというのもあるけど、それだけじゃなかった。ニューヨークでの生活は快適すぎたんだ。毎日が安定していて、まるで引退後みたいな暮らしだった。でも当時の俺にはそういう生活は合わなかった。常に何かに挑戦していたい。ラップでも、音楽でも、身体を鍛えることでも、メンタルの面でも。自分の限界を超えて、新しいレベルに到達したい。俺にとって人生は、あらゆる面で自分の可能性を最大限に引き出すことなんだ。
――Cash Money Recordsとの契約は、まさに大金が動いた話だったわけですよね。相当すごい経験だったのではないですか?
良くも悪くも、だね。当時最大のヒップホップレーベルと契約した"初のアジア人グループ"。それ自体はすごいことだった。でもAziatixの音楽は一切リリースされず、4年間ずっと塩漬けにされたことで、勢いを完全に止められたんだ。もし時間を戻せるなら、あの契約はしない。金がすべてじゃないんだ。
――2016年の『Show Me the Money 5』ではファイナル目前まで進出されました。それが韓国のヒップホップシーンで本格的に名前が知られるきっかけになったのでしょうか?
間違いないね。あれも自分への挑戦だった。とくに韓国語でのラップという面で。まさか自分が韓国語でラップするとは思ってもいなかったから。でもSMTM5に出場したことで、本当にたくさんのチャンスに繋がった。あの経験には心から感謝しているんだ。
――Jessi、Dok2、Sik-Kなど多くのアーティストとコラボされてきましたが、韓国やアジアの他の国で、ぜひ一緒にやりたいというアーティストはいますか?
どの国のアーティストでもいいけど、最高のアーティストと仕事がしたい。俺はインターナショナルなアーティストだから、同じように高みを目指している人間と一緒に素晴らしいプロジェクトを創り上げたいんだ。
――ニューヨークのクイーンズ出身とのことですが、G Rap、Nas、50 Centなどを聴いて育ったのでしょうか? 最も影響を受けたラッパーを教えてください。
そう、ニューヨークのクイーンズ育ちだ。Nas、50 Cent、Jay-Z、Kanye West、Big Pun、Mase、Notorious B.I.G.、Eminem、Busta Rhymes...。そういったレジェンドたちを聴いて育った。全員がそれぞれ違う形で影響を与えてくれたよ。キャッチーなフックは50 Cent、フロウはNasとBig Punに影響を受けている。それとJay-Z、Kanye West、Eminem、Big Punからはリリックの面で。あとMaseからは佇まいや見せ方の部分で影響を受けたよ。
――昨年YouTubeで公開された「Bi-Polar Freestyle」は非常にハードな仕上がりでした。ご自身としては、フリースタイルやバトル寄りのラッパーだという意識はありますか?
「Bi-Polar」は完全にフリースタイルだった。何も書かずに、文字通りその場でバースを叩き込んだんだ。俺は正直、バトルも、フリースタイルも、いい曲作りも全部やりたいタイプなんだよね。そもそもヒップホップは競い合いの文化なんだ。ルーツはラップ、DJ、B-Boyのバトルにある。ヒップホップが生まれた時代、ストリートには犯罪や暴力が蔓延していた。ヒップホップはそんなストリートをひとつにまとめる力だったんだ。
――今年の『SMTM12』ではOGとして復帰し、ニューヨークを強烈にレペゼンされていましたね。ニューヨーク出身であることで、韓国では特別なリスペクトを受ける部分はありますか?
正直に言うと、キャリアの途中でトレンドを追いかけた時期もあった。でも今は、自分自身に正直でいようと決めたんだ。自分のバイブス、自分のサウンドで勝負する。だからニューヨークの泥臭いスタイルに立ち返った。韓国でリスペクトされている理由は、ニューヨーク出身だからじゃない。俺が何者か、これまで何を積み上げてきたか、そして今でも何ができるか。そこに対するリスペクトだ。確かに歳は少し取ったけど、まだ誰にも負ける気はない。だからまだやってるんだよ。それにヒップホップに年齢なんて関係ないからね。
――最後に2026年の展望をお聞かせください。新しい音源のリリース予定などはありますか?
プロジェクトも曲も山ほどあるし、2026年もその先も動き続けるよ。アーティストとしてまだ成長できる場所にいられること自体、本当にありがたいと思っているんだ。LiFTEDの読者に一つだけ伝えるとすれば「時間を無駄にするな」と言いたい。叶えたい夢があるなら、遅すぎるなんてことはない。今すぐ始めろ。常に高みを目指してほしいね。



